プレイヤーからの「要望」が、本当に「必要」な修正とは限らない!『Apex Legends』開発者が語る──ゲームクリエイターとしての姿勢&面接でアピールすべきこと
eスポーツ専門の求人メディア「eek(イーク)」では、eスポーツに関するさまざまな仕事にフォーカスした記事をお届けします。今回は、『Apex Legends(以下、『Apex』』)のゲームの根幹を支える2名のデザイナー、そしてディレクターにインタビューを実施。
業界未経験から挑戦を始めたJohn Larson氏、プレイヤーとしての熱意から開発者へと転身したEric Canavese氏、そしてApex全般の概要に精通するエキスパートJosh Mohan氏。
異なるバックグラウンドを持つ3名が現場で見出した「ゲームクリエイターというキャリアの魅力」に迫ります。
業界未経験から挑戦を始めたJohn Larson氏、プレイヤーとしての熱意から開発者へと転身したEric Canavese氏、そしてApex全般の概要に精通するエキスパートJosh Mohan氏。
異なるバックグラウンドを持つ3名が現場で見出した「ゲームクリエイターというキャリアの魅力」に迫ります。
初のゲーム業界に挑むLarson氏、13年以上のベテラン開発者Canavese氏、ローンチ直後から携わるMohan氏
──お三方のこれまでのキャリアについてお聞かせください。
John Larson氏(以下、Larson氏)
『Apex』は私にとって初めてのゲーム開発経験です。シーズン7の頃、ちょうどホライゾンとオリンパスが導入された時期にApexのデザインに関わり始めました。主に最初の段階ではライブバランスデザイナーとして、パッチのホットフィックス*や競技シーンでのメタの調整を担当していました。
その後、Ericさんと共に武器のバランス調整を行い、現在はLegends teamでレジェンドデザインに注力しています。最近では、ジブラルタルやニューキャッスルなどのサポートクラスの調整や、シーズン20で実装したレジェンドアップグレードシステムの開発を担当しました。
この仕事の最も魅力的な点は、クリエイティブな問題解決に挑戦できることです。
『Apex』のような世界規模のゲームに携わり、「Apex Legends Global Series(以下、ALGS)」といったイベントに参加するたびに、私たちの仕事がグローバルな影響力を持っていることを実感します。そのことが、より良い仕事をしようというモチベーションになっています。
※1 ソフトウェアに発見された不具合を迅速に修正するために配布される修正プログラム
レジェンドデザイナー John Larson氏
Eric Canavese氏(以下、Canavese氏)
私は13年以上ゲーム開発に携わっております。まずは、Capcom Canadaでキャリアをスタートし、その後Electronic Arts(以下、EA)を経てRespawn*2に参画しました。
『Apex』との出会いは、ゲームが発表された当日からのプレイヤーとしてでした。当時はEAの他のプロジェクトに携わっていましたが『Apex』の虜になり、そんな折にRespawnチームが新しい開発メンバーを募集していることを知りました。
シーズン1と2のコンテンツを作る開発者をチームとしてまとめ上げようとしていた時期で、当時のマネージャーに「自分をチームに入れてくれないと絶対後悔します」とアプローチしました。
1〜2週間後にチームから声がかかり、初期メンバー6〜7名程度のグループで仕事を始めることができました。
※2 コンピューターゲーム開発を行う企業。本社はアメリカ合衆国カリフォルニア州ビバリーヒルズに所在する。
リードBRデザイナー Eric Canavese氏
Josh Mohan氏(以下、 Mohan氏)
私は、Respawnに入社して4年になります。『Apex』のローンチ直後に参加し、これまでナラティブからシステムデザインまで、様々な側面に関わってきました。
現在はバトルロイヤルのアソシエイトデザインディレクターとして、3つの異なるデザインチーム(レジェンド、マップ、武器とシステム)を統括しています。私の仕事で最もやりがいを感じるのは、このゲームに情熱を持って取り組むデザイナーたちと働けることです。
社内では毎日テストプレイを行い、様々な実験的な変更を試しています。デザイナーたちが次に何を試すべきか、ゲームの感触はどうか、何を修正すべきかについて議論している様子を管理しています。
必ずしも、常に意見が一致するわけではありませんが、デザイナーたちの情熱が私の仕事を本当に楽しいものにしてくれています。
また、これまでのキャリアでは、様々なタイプのゲームに携わる機会がありました。アドベンチャーゲーム、オープンワールドのアドベンチャーゲーム、ナラティブ(ストーリー)重視のゲーム、そして現在のマルチプレイヤー競技ゲームです。
この経験を活かし、ゲームのファンタジーな面やストーリー、感情的な面でもどう感じるかという感覚を大切にしています。これは競技的なゲームを作る際でも同様です。
これまでの幅広いゲームや経験が、現在の業務に活かされていると考えています。
アソシエイト・デザイン・ディレクター Josh Mohan氏
開発チーム6名で100以上のレジェンドのコンセプトを考案──開発者たちの忘れられないキャリア
──今までのキャリアの中で印象に残っている出来事を教えてください。
Larson氏
入社して約1ヶ月後の出来事が、私にとって最も印象的でした。それまでプレイヤーとして親しんできた『Call of Duty®: Black Ops』や『Titanfall®』の開発者たちと一緒に働けることに感動していた時期です。
私は、ライブバランスチームの一員として、当時競技シーンで議論を呼んでいたコースティックのバランス調整を担当することになりました。一度は提案を却下されましたが、レジェンドリードとディレクターに自分の意図を丁寧に説明する機会をいただき、最終的に採用していただきました。
ゲーム開発の経験がない新人の意見を信頼してくれただけでなく、その変更がコミュニティからも好評を得られたんです。さらに、変更の意図を私から直接プレイヤーに説明させていただいた際も、非常に前向きに受け止めていただきました。チームとコミュニティ、双方からの信頼を得られた瞬間は、このキャリアを選んで良かったと心から感じました。
Canavese氏
EAで『Apex』の開発に関わり始めたばかりの頃の出来事が、最も印象に残っています。
開発チーム6〜7名で、紙の上で100以上のレジェンドのコンセプトを考案する日々。アイディアを出し続け、それらをRespawnロサンゼルスチームと共有し、ブラッシュアップしていく。
そうしてチームの信頼を少しずつ得ていき、ついに「実際にゲームエンジンを使って作ってみてください」というオファーをいただいた瞬間は、今でも鮮明に覚えています。自分自身がプレイヤーとして愛していたゲームのコンテンツを、自分たちの手で作れることになった喜びは何物にも代えがたいものでした。
そこから徐々にチームは大きくなり、今では300人規模のバンクーバースタジオにまで成長しました。そして今、日本でこうしてイベントに参加し、タクシーの運転手さんやレストランのスタッフ、ライブハウスで出会ったベーシストまで、様々な場所で『Apex』ファンと出会えています。当時の小さなチームでの開発が、こんなにも大きな広がりを見せるとは想像もできなかったことです。
家で開発作業をしていると、画面の向こう側にいるプレイヤーのことを忘れがちになります。しかし、このように世界中を訪れ、実際のプレイヤーと出会うことで、私たちの作るゲームが持つ影響力を実感できます。
EAで『Apex』の開発に関わり始めたばかりの頃の出来事が、最も印象に残っています。
開発チーム6〜7名で、紙の上で100以上のレジェンドのコンセプトを考案する日々。アイディアを出し続け、それらをRespawnロサンゼルスチームと共有し、ブラッシュアップしていく。
そうしてチームの信頼を少しずつ得ていき、ついに「実際にゲームエンジンを使って作ってみてください」というオファーをいただいた瞬間は、今でも鮮明に覚えています。自分自身がプレイヤーとして愛していたゲームのコンテンツを、自分たちの手で作れることになった喜びは何物にも代えがたいものでした。
そこから徐々にチームは大きくなり、今では300人規模のバンクーバースタジオにまで成長しました。そして今、日本でこうしてイベントに参加し、タクシーの運転手さんやレストランのスタッフ、ライブハウスで出会ったベーシストまで、様々な場所で『Apex』ファンと出会えています。当時の小さなチームでの開発が、こんなにも大きな広がりを見せるとは想像もできなかったことです。
家で開発作業をしていると、画面の向こう側にいるプレイヤーのことを忘れがちになります。しかし、このように世界中を訪れ、実際のプレイヤーと出会うことで、私たちの作るゲームが持つ影響力を実感できます。
面接でアピールしがちな「すぐに解決策を示せる」は現場では役に立たない
──最後に、ゲーム開発業界を目指す方へのアドバイスをお願いします。
Larson氏
どのように考え、どのようなプロセスで解決策にたどり着いたのか。この思考プロセスを説明できることが重要です。
ゲーム開発は、完璧な答えのない抽象的な問題に直面することが多い仕事です。そのため私たちが新しいデザイナーやエンジニアを採用する際に重視しているのは、問題解決に対するアプローチの仕方です。
そのためにも、まずは自分でゲームを作ってみることをおすすめします。完全な形のゲームを作る必要はありません。むしろ、課題を見つけ、それを解決するまでのプロセスを経験し、その過程で何を学んだのかを説明できることが大切です。なぜなら、ゲームが好きなことと、ゲームを作れることは、まったく異なるものだからです。
ゲーム開発は、複雑に絡み合うパズルのようなものです。一つひとつのパズルを完璧に解くことは不可能かもしれません。しかし、それらのパズルがどのように関連し合い、全体としてどのような体験を生み出すのかを理解することが、優れたゲームを作る鍵となります。だからこそ、「どのように考えるか」というプロセスが重要なのです。
Canavese氏
重要なのは、プレイヤーの動機を理解する姿勢です。
デザインの部門の採用面接に来たクリエイターからは、「すぐに解決策を提示できる能力」をアピールされることが多いです。
しかし、現場で必要なのはそういったスタンスではありません。プレイヤーが「欲しい!」と主張しているものと、実際に「必要」としているものは、往々にして異なります。そこを理解せずに解決策を提示しても、本質的な問題解決にはつながりません。
Mohan氏
自分が目指す立場の人々と出会い、アドバイスを求めるなど、業界の人々との関係を築くことに焦点を当てることをおすすめします。
可能であればイベントに参加したり、Discordやトーナメントを通じて人々とつながりを作ったりするのも良いでしょう。そして、eスポーツ業界は確かに情熱的で競争的な世界ですが、競争はゲーム内の戦場の中だけにとどめ、個人攻撃は避けるべきでしょう。
結局のところ、eスポーツの世界は小さく、キャリアを通じて何度も顔を合わせることになります。そのため、たとえ意見が合わなくても、敬意を保つことで関係を良好に築くことが重要です。
自分が目指す立場の人々と出会い、アドバイスを求めるなど、業界の人々との関係を築くことに焦点を当てることをおすすめします。
可能であればイベントに参加したり、Discordやトーナメントを通じて人々とつながりを作ったりするのも良いでしょう。そして、eスポーツ業界は確かに情熱的で競争的な世界ですが、競争はゲーム内の戦場の中だけにとどめ、個人攻撃は避けるべきでしょう。
結局のところ、eスポーツの世界は小さく、キャリアを通じて何度も顔を合わせることになります。そのため、たとえ意見が合わなくても、敬意を保つことで関係を良好に築くことが重要です。
新着の記事
- プレイヤーからの「要望」が、本当に「必要」な修正とは限らない!『Apex Legends』開発者が語る──ゲームクリエイターとしての姿勢&面接でアピールすべきこと
- 【Apex Legends】世界最強チームにキャリアを聞いてみた ──Esporst World Cup(eスポーツワールドカップ)優勝チーム Alliance
- ZETAファンミで女性率がup!「東京eスポーツフェスタ2025」【企業ブースレポ】
- 【独占取材】eスポーツで地域をつなぐ「とちぎeスポーツ地域活性化実行委員会」に聞く『未来を紡ぐeスポーツの可能性』
- キャリア視点で見る「eスポーツビジネスフォーラム」現地レポート【日本eスポーツアワード2025】
- 【連載企画】ENZA氏インタビュー<p>eスポーツ界のレジェンドENZA氏に黎明期から現在までを複数回にわたり深堀ってお届けします。eスポーツ業界で働きたい方はぜひお役立てください。 </p>
- 【独占取材】建設業とeスポーツを繋ぐ「e建機チャレンジ」とは?ーー「運輸デジタルビジネス協議会」とプロゲーマーのセカンドキャリア支援について考える
- 【独占取材】なぜ札幌市は「ALGS」の誘致に成功したのか? ── 札幌市「経済観光局」が描く"ゲームの街"構想とは
- 大手電力会社からゲーミングブランドの代表へ!心羅-shinra gaming-名倉諒さんのキャリアとは
- 【インタビュー】高校生からeスポーツ活動開始~そして起業へ、トンピ?さん(福岡智洋さん)のキャリアとは