eスポーツへの愛と人脈作りがキャリアを紡ぐ──ALGSブランドマーケティング責任者に特別インタビュー

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eスポーツへの愛と人脈作りがキャリアを紡ぐ──ALGSブランドマーケティング責任者に特別インタビュー

eスポーツ専門の求人メディア「eek(イーク)」では、eスポーツに関するさまざまな仕事にフォーカスした記事をお届けします。今回は、「Apex Legends Global Series(以下、ALGS)」のブランドマーケティング責任者を務めるJasmine Chiangさんです。

Chiangさんは2019年にLenovo Legionでゲーム業界でのキャリアをスタートし、『Apex Legends(以下、『Apex』』)のスポンサーシップを担当。その後、ALGSのマーケティングチームへと活躍の場を広げ、現在は世界規模のeスポーツイベントの企画・運営に携わっています。

今回は「ゲーム業界でのキャリアの歩み」「グローバルイベントの運営における課題」「日本市場でのeスポーツ展開」を中心に伺いました。

ゲームへの情熱がキャリアを切り拓く

──これまでのご経歴についてお聞かせください。


まず、2019年にLenovo Legionでゲーム業界でのキャリアをスタートしました。当時、ブランド認知度を高めるためのeスポーツスポンサーシップの企画を任されたんです。そこで、当時リリースされたばかりの『Apex』に大きな可能性を感じ、スポンサー企画を提案しました。

実は私自身、『Apex』の大ファンで、このゲームには大きなeスポーツとしての潜在性があると確信していました。その後3年間、『Apex』のチームと密接に関わる中で、現在の職務へと自然な形で移行することができました。

今振り返ると、この2年間は私にとって最高の時間でした。というのも、私たちチームメンバー全員が『Apex』の熱心なプレイヤーなんです。仕事以外の時間でもゲームを楽しんでいて、ファンとして見たいと思うコンテンツを自分たちの手で作り出せることに、大きなやりがいを感じています。

──今までのキャリアの中で、特に重要だと感じた要素は何でしょうか?


ゲーム業界での成功には、ネットワーキングが非常に重要だと実感しています。この業界は見た目ほど大きくなく、誰もが誰かを知っているような密接なつながりがあります。
私自身、キャリアの初期段階で多くの時間を人脈作りに費やしました。「5分でいいので、お話を聞かせてください」と声をかけ、できるだけ多くの人と会うように心がけました。実際、私のゲーム業界でのキャリアは、そうして築いた人脈からの紹介で次々と広がっていきました。
また、ゲームとそのエコシステムへの深い理解も欠かせません。マーケターとして成功するためには、ゲームの内容を隅々まで理解し、ファンの気持ちを完全に把握する必要があります。そうでなければ、作り出すキャンペーンが人々の心に響くことはないでしょう。

観戦から体験へ──ALGSが目指す次世代のeスポーツイベント

──現在のお仕事の具体的な内容を教えていただけますか?


ALGSのブランドマーケティングを統括する立場として、配信、ソーシャルメディア、ウェブサイト、その他ALGSに関連するすべてのコンテンツを担当しています。チームメンバー全員が、『Apex』ファンとしての視点を活かしながら様々なコンテンツを企画・制作しています。

近年のeスポーツイベントは、単に試合を「観戦して帰る」だけでなく、より包括的な「体験の場」として進化しています。そのため、今回の札幌での大会では、ALGS史上初となるアジア地域でのオフライン開催として、札幌ドームの新システムを最大限に活用しました。

特に、試合会場とファンゾーンを分離した設営は、これまでにない規模のものとなりました。
ファンゾーンでは、選手との交流など、『Apex』ファンなら誰もが楽しめるような仕掛けを多数用意しました。その結果、ファンの皆さまにとって忘れられない思い出を作れる場として機能させることができたと思います。

特に力を入れたのは、ゲーム内の世界観を現実に持ち込む取り組みです。実物大のレプリカ展示や、会場最上階に「ミラージュボヤージュ*」をモチーフにした特別なスペースを設置するなど、ゲームの世界観をリアルに体験できる場づくりに注力しました。

※『Apex Legends』に登場するエリアのひとつ。空中に浮いているのが特徴。「Apex Legends Global Series(ALGS) Year 4: 2024Championship」では、大和ハウス プレミストドーム内の展望台を活用して再現された。

──グローバルなイベント運営において、特に重視されている点は何でしょうか?


グローバルブランドとしての強みを活かしながらも、各地域のコミュニティに寄り添った運営を心がけています。私たちのチームは常に高い基準を設定し、イベントごとに改善を重ねることを意識しているんです。実は今回の札幌での大会は、数ヶ月にわたる入念な準備期間を経て実現しました。

私はニューヨークのタイムゾーンにいるため、日本チームとの打ち合わせは早朝だったり深夜だったりすることも多かったのですが、そうした努力も含めて、すべてが報われる結果となりました。イベントの成功は一朝一夕には実現できません。
チーム全体で細部まで考え抜き、一つひとつの要素を丁寧に積み重ねていくことが重要だと実感しています。

ALGSの最大の強みは、その真のグローバル性にあります。今回の大会だけでも30カ国以上から選手が参加しており、私たちのファンベースも世界中に広がっています。世界のどの地域に行っても、『Apex』への愛を感じることができるんです。
また、他のどのゲームコミュニティとも異なる、温かく包容力のあるコミュニティの存在も大きな特徴です。私はこれまでeスポーツやゲーム業界で様々な経験をしてきましたが、『Apex』のコミュニティほど温かいコミュニティは他にないと感じています。

それが、RedBullやINZONE(ソニーのゲーミングデバイスブランド)といったスポンサー企業との協力関係にも活きていると感じています。

──eスポーツ業界を目指す方にアドバイスをお願いします。


情熱を持っている人は、その熱意が必ず相手に伝わります。ゲーム業界への参入は、現在の経済状況では簡単ではないかもしれません。

しかし、本当にやりたいという強い意志があれば、必ず道は開けると信じています。業界に入るためのチャンスを逃さないよう、積極的にネットワークを広げることを意識してみてください。

また、業界の動向やeスポーツシーンをしっかりと研究し、理解を深めることもおすすめします。ゲームを楽しむだけでなく、ビジネスとしての視点も持つことで、より多くの可能性が見えてくるはずです。

言葉を超えて広がる国境を越えたコミュニティの輪

──最後に今回、日本に来日されて、どのような印象的なエピソードがありましたか?


日本滞在中に数多くの心温まる出来事がありました。例えば、コンビニエンスストアやバー、タクシーの中でも、『Apex』のTシャツを着ているだけで「『Apex』が大好きです!」と声をかけていただけるんです。

特に印象的なのは、日本のファンの方々がチームの国籍を問わず応援してくださることです。AllianceやOne Hundred Thievesといった海外チームのファンも多く、選手との交流会やチームマーチャンダイズの販売は常に大きな人気を集めています。

ゲームに携わる者として認識された瞬間から、すでに深い敬意と愛情を持って接していただけることに、本当に感銘を受けています。

──Chiangさん、ありがとうございました!


Electronic Arts提供

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