味の素㈱「ゲームサポーターズ」とは何なのか?── EVO Japanに参戦中のノナカさんを密着取材
普段は表に出てこない「eスポーツを盛り上げる裏方さん」にインタビューする本連載。
今回は、味の素株式会社(以下、味の素社)の社内新規事業として立ち上がった「ゲームサポーターズ」の発起人であり、現役の『STREET FIGHTER 6』プレイヤーでもある野中さんにお話を伺いました。
また、この取材は「EVO Japan 2025」の会期中に実施。
プレイヤーとして参加された様子も、密着取材させていただきました。
今回は、味の素株式会社(以下、味の素社)の社内新規事業として立ち上がった「ゲームサポーターズ」の発起人であり、現役の『STREET FIGHTER 6』プレイヤーでもある野中さんにお話を伺いました。
また、この取材は「EVO Japan 2025」の会期中に実施。
プレイヤーとして参加された様子も、密着取材させていただきました。
研究部門からビジネス部門へ──社内の新規事業公募制度を活用してeスポーツ支援プロジェクトを立ち上げ
──そもそもの「味の素㈱ゲームサポーターズ」の立ち上げの経緯についてもお聞かせください。
味の素社では、当社グループの社員を対象にした新規事業公募の制度があります。私は元々研究開発職として味の素社に入社したのですが、将来新しい事業を立ち上げたいとも思っていました。そこで、社内の新規事業公募制度「A-STARTERS」に目をつけて、私の趣味でもあったeスポーツと味の素㈱のリソースを掛け合わせた新規事業を提案しました。
私は川崎にある研究所で、アミノ酸系香粧品素材の研究開発に従事していました。それと並行して公募にチャレンジしていたのですが、事業案を作るために重要なマーケティングや市場調査はまったく未経験だったので、応募をするだけでも正直苦労しました。それでも、自分で現場に足を運んだりして必要な情報を地道に集めていった結果、プレゼン資料を完成させることができ、社内選考を突破しました。
選考の中では、「市場の盛り上がり」や「味の素社が業界に参入するべき理由」などを、ロジカルに説明することを特に心がけました。ここは研究職としての経験が活きた部分だと思っています。
そこから「ゲームサポーターズ」の構想がスタートしました。現状はほぼ1人で対応している一方で、社内各部署からの協力にはとても助けられています。例えば、今回のEVO Japanでは「アミノバイタル®」のゼリードリンクをサンプリングさせていただきました。このサンプリングについて製品担当の社員に相談した際には、すぐに協力に動いていただけました。研究部門や他部署のメンバーから「何かあれば協力したい」と声をかけていただくことも多く、期待してくれているのだと感じます。来年度以降、より本格的な体制で進めていけるようにはたらきかけているところです。
また、私は良くも悪くも格ゲーに特化してしまっているため、FPSやMOBAなど、ジャンルごとに詳しい仲間を集めたいと考えております。それぞれのプレイヤー層に合ったアプローチができるような「チーム」としての展開も構想中です。
密着取材──試合の様子をお届け!
ここからは予選ラウンドの密着取材をお届け。
「全力を出し切りたい」「大胆なプレイを見てほしい」
そうインタビューに答えてくれた、試合開始前の野中さん。
EVO Japanは初参戦とのことですが、試合前も周囲の方と雑談をされていて、とてもリラックスされているご様子でした。
「全力を出し切りたい」「大胆なプレイを見てほしい」
そうインタビューに答えてくれた、試合開始前の野中さん。
EVO Japanは初参戦とのことですが、試合前も周囲の方と雑談をされていて、とてもリラックスされているご様子でした。
野中さんのプールの試合がスタートしました。
使用キャラクターは「DEE JAY(ディージェイ)」。
豪快ながらも、多彩な動きで戦うキャラクターです。
使用キャラクターは「DEE JAY(ディージェイ)」。
豪快ながらも、多彩な動きで戦うキャラクターです。
対する1戦目(1人目)の対戦相手のキャラクターは「JP(ジェーピー)」。
遠距離から攻撃が強力なキャラクターなので、野中さんは「いかに接近戦に持ち込むか」が重要となります。
遠距離から攻撃が強力なキャラクターなので、野中さんは「いかに接近戦に持ち込むか」が重要となります。
試合前の発言どおり、野中さんはアグレッシブな攻めを展開します。
飛び道具からのジャンプでの接近など、多角的な攻めで自分のペースに持ち込みます。
飛び道具からのジャンプでの接近など、多角的な攻めで自分のペースに持ち込みます。
ここで注目したいのが、野中さんのコントローラーの持ち方。
一般的なゲームパッドの持ち方とは異なり、左手は普通ながらも、右手はアーケードコントローラーのように指をボタンに添えます。
聞いたところによると「研究の結果自分に最も馴染むのが、この形だった」とのこと。
元スマブラ勢ということで、ゲームパッドの操作に慣れているのは納得ですが、どうやらストⅤでの操作に適応する際に、このフォームになったようです。
一般的なゲームパッドの持ち方とは異なり、左手は普通ながらも、右手はアーケードコントローラーのように指をボタンに添えます。
聞いたところによると「研究の結果自分に最も馴染むのが、この形だった」とのこと。
元スマブラ勢ということで、ゲームパッドの操作に慣れているのは納得ですが、どうやらストⅤでの操作に適応する際に、このフォームになったようです。
見事に初戦(1人目)を勝利!
喜びも束の間、すかさず2戦目(2人目)がスタートします。
この緊張感のある中での、連戦がEVO Japanの予選ラウンドです。
喜びも束の間、すかさず2戦目(2人目)がスタートします。
この緊張感のある中での、連戦がEVO Japanの予選ラウンドです。
2戦目(2人目)のキャラクターは「LUKE(ルーク)」。
ストⅥにおける、主人公的な立ち位置でオーソドックスなキャラクターです。
これが取材中の我々も、思わず見入ってしまうほどの激戦に。
ストⅥにおける、主人公的な立ち位置でオーソドックスなキャラクターです。
これが取材中の我々も、思わず見入ってしまうほどの激戦に。
お互いに一歩も譲らず、最終ラウンドへ。
お互いの体力が残りわずかになった場面で、野中さんの無敵暴れが決まり、見事に勝利しました。
お互いの体力が残りわずかになった場面で、野中さんの無敵暴れが決まり、見事に勝利しました。
その後、2戦目(2人目)も勝利して、2連勝!
初日のプール抜けに向けて、幸先の良いスタートを切りました。
初日のプール抜けに向けて、幸先の良いスタートを切りました。
(※勝利した直後に1枚)
その後、夜の22時まで戦い続けた野中さん。
結果的に、3勝2敗となり予選抜けは叶いませんでしたが、見事に戦い抜きました。
「明日は応援に徹します!」
そう話した野中さんの、これからの活動に期待が集まります!
その後、夜の22時まで戦い続けた野中さん。
結果的に、3勝2敗となり予選抜けは叶いませんでしたが、見事に戦い抜きました。
「明日は応援に徹します!」
そう話した野中さんの、これからの活動に期待が集まります!
惜しくも3勝2敗で初日敗退…試合後を取材
──「EVO Japan 2025」への大会出場、お疲れ様でした。率直な感想を教えてください。
ありがとうございます。私自身、ストリートファイターシリーズを4〜5年プレイしており、今回の『STREET FIGHTER 6』でもプレイヤーとして大会に挑戦しました。実はこういった大規模なオフライン大会への出場は初めてで、いつも通りの実力を発揮する難しさを強く実感しました。
それでも勝利を収めることができた瞬間は、大人になってからなかなか得られない貴重な「成功体験」だったので、純粋に楽しかったですね。
──今回の大会出場を経て、「ゲームサポーターズ」の活動に活かせそうなフィードバックありますか。
やはり大規模大会の緊張感や環境の違いは、プレイヤーのパフォーマンスに大きく影響するのだと、身をもって感じました。大会の中で、普段の練習の成果を発揮できる体調やメンタルを整える重要性を、あらためて認識しました。
私たち「ゲームサポーターズ」の活動の1つとして、eスポーツプレイヤーのコンディショニングサポートを充実させることを検討しています。当社は2003年から、日本を代表する選手およびその候補選手を対象とした「ビクトリープロジェクト®」というコンディショニングサポート活動に取り組んでいます。そういったサポート知見を、eスポーツでも活用することができるのではないかと考えています。
フィジカルスポーツとeスポーツは違う部分もありますが、「緊張に打ち勝つマインドづくり」「土台となる体調管理」といった観点では、共通点も多いと感じています。
なぜ味の素社がeスポーツに?──ゲーマーの日常に自然と「溶け込む」状態を目指して
──「ゲームサポーターズ」として、野中さん自身でたくさんのeスポーツイベントに足を運んでいるそうですが、プレイヤーとのコミュニケーションを通じて得た気づきはありますか。
「なんで味の素社がeスポーツに?」と不思議に思われることは少なくありません。しかし、きちんと理由や狙いを説明すると、多くの方が納得してくださいますし、むしろ歓迎してもらえているような印象です。やはり「eスポーツ」と「味の素社」の親和性は高いのだと確信しています。
色んなお話を伺ってきて思う、本プロジェクトが目指す理想の形の一つは、「多くの人々のゲーミングライフに味の素社が自然と溶け込んでいること」です。競技として取り組む方も、趣味として楽しむ方も、当社のサポートで自然と健康的になっているような、そんな世界が実現できればと思っています。
──最後に、今後の展望を教えてください。
まずは、eスポーツ支援の「方法論」を構築・検証していくことが当面の目標です。どのようなサポートや生活習慣が、プレイヤーのパフォーマンス向上に寄与するのか。
そのための情報を現場に行って集めながら、方法論の構築と再現性のあるサポートの仕組みづくりに挑戦したいと思っています。スマートとは程遠いアプローチになるかもしれませんが、泥臭く、誠実に取り組んでいくことがきっと正しいと考えています。
今後、本プロジェクトがeスポーツ業界の発展に良い影響を与えられるよう、そしてeスポーツという切り口から味の素社が社会に大きく貢献できるよう、一歩ずつ前に進んでいきます。
──野中さん、ありがとうございました!
取材・文:小川翔太、松永華佳
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