「株式会社PCCS」代表取締役、望月伸彦氏【トップインタビュー】
普段は表に出てこない「eスポーツを盛り上げる裏方さん」にインタビューする本連載。
今回は国内のeスポーツ施設、eスポーツカフェの開業支援を行っている、株式会社PCCS代表取締役の望月伸彦氏を取材しました。
同社の「事業内容」や「eスポーツ業界に参入したきっかけ」を聞きました。
今回は国内のeスポーツ施設、eスポーツカフェの開業支援を行っている、株式会社PCCS代表取締役の望月伸彦氏を取材しました。
同社の「事業内容」や「eスポーツ業界に参入したきっかけ」を聞きました。
ネットカフェ事業からeスポーツ事業への転換のきっかけは、ゲームが「遊ぶ場」ではなく「交流の場」になったこと
──御社の事業内容を教えてください。
eスポーツ施設の開業支援、および継続的に運営できるようなサポートをやっています。
「eスポーツの施設を作りたい」「現状の施設にeスポーツを組み込みたい」といったお客様に対して、開業に必要な機材やネットワークの選定や導入、施設内のコンテンツの設計、運営していく上でのセキュリティなど、安心、安全、快適に施設を運営していくためのお手伝いをしています。
また開業支援だけでなく、施設運営を開始してからも長いお付き合いをさせていただいています。開業後のアフターフォロー、施設運営のご相談、実際にイベントをする際のお手伝いがメインです。
サポートの形は様々で、ゲーミングPCの選定と導入だけをお手伝いさせていただくこともあれば、店舗の設計からコンサルティングさせていただくこともあります。
これまで、125社ほどの企業様を支援させていただきました。
──御社がeスポーツ業界に参入した時期ときっかけを教えてください。
当社が本格的にeスポーツ領域に関わり始めたのは、2012年です。
もともと当社はネットカフェ関連の事業をしていたので、PC環境、ネットワーク、配信機材など、ゲームやデジタル空間を支える技術領域に関わってきました。
eスポーツ業界参入のきっかけは、単に「ゲームが遊べる場所」ではなく、競技、交流、配信、教育、地域活性まで含めた「eスポーツ空間」の必要性を感じるようになったことです。当時はまだ日本ではeスポーツという言葉が一般的ではありませんでした。
最初に手掛けたのは、eスポーツ施設関連のシステム開発です。
2012年当時、日本ではeスポーツ施設の運営に特化したシステムはまだほとんど見られませんでした。当時、私たちが韓国のeスポーツ施設を視察した際、専用のシステムで効率的に運営されていると知りました。
そのシステムを参考にして、日本で使えるシステムを作りました。
システム開発からスタートしたeスポーツ事業、eスポーツ先進国・韓国のシステムを参考に
──当時、eスポーツ先進国といわれていた韓国のシステムを参考にしたのですね。具体的にどのようなシステムなのでしょうか。
顧客管理や稼働率の確認などを行うためのシステムで、当社のオリジナルのツールです。
いうことは、他のeスポーツ施設関連の企業さんも、何かしらの独自で店舗運営のシステムを構築されているのでしょうか。
運営方法は施設によってさまざまでしょう。
アナログで管理しているところもあれば、ネットカフェやカラオケ店の部屋管理システムを応用しているケースもあります。
eスポーツ施設だからといって、同じシステムが流用できるわけではなく、店舗のビジネスモデル次第で使えるシステムが異なってきます。
例えば、当社が支援している施設の中には、ゲームセンターに近い仕組みを採用しているケースがあります。入場は無料で、利用した時間だけ課金されるようなモデルです。
利用料金を前払いでチャージする形式になっているので、プリペイドカードのようにチャージした範囲内で利用できる仕組みです。
この仕組みの店舗側のメリットとしては、料金管理がしやすいという点でしょう。
──効率的な運営には、施設のビジネスモデルに合わせたシステムを導入する必要があるんですね。他にも便利なシステムというのはあるのでしょうか。
ゲームのパッチ適用やアップデートを一括管理するためのシステムがあります。これも韓国から輸入してきたツールです。
──施設内の全てのゲーミングPCを一斉にアップデートできるというシステムということですか。
おっしゃるとおりです。
──たしかに手作業でやるとなると時間も掛りますし、更新漏れがあったときに大きな問題になりますね。
そうなんです。このアップデート管理システムについては、日本で作るのが難しく、韓国のシステムライセンスを輸入しています。
ただし、そのままでは国内の運用環境やソフトウェア利用条件に合わない部分もあったため、日本向けに独自にカスタマイズして販売を始めました。
eスポーツ施設のプロが語る「素晴らしいeスポーツ施設の条件」とはなにか
──望月さんの考える、素晴らしいeスポーツ施設の条件とは何でしょうか。
人が集まり、交流が生まれている場所です。
もちろん高性能なPCや立派な配信設備がある空間も素晴らしいですが、eスポーツ空間として本当に魅力を感じるのは、交流が盛んであることです。
子どもたちや地元企業、学校などがその空間に関心を持ち、配信や発信の場になったり、パブリックビューイングのようにみんなで集まって盛りあがったり。
そうした共感が生まれている瞬間を見ると「いい空間だな」と感じます。
──これまで手掛けてきたeスポーツ施設で、最も印象に残っているeスポーツ空間を教えてください。
福岡の通信会社QTnet が運営する「esports Challenger's Park」が印象に残っています。
単にPCを置いたスペースではなく、eスポーツを複合的に楽しめる場所になっているんです。
──具体的にどのような空間なのでしょうか?
場所は福岡・天神にあります。
まず目を引くのが、円形のeスポーツスタジアムです。5対5の対戦ができるほか、パブリックビューイングにも対応できるスペースになっています。
その横にはカフェスペース、奥にはe スポーツ教室用の部屋があり、通常のプレイエリアのようにPCが並んでいる場所もあります。また、企業PRにも使えるスペースがあり、いろいろな用途に対応していました。
例えば、休日などに「お子さんがeスポーツを楽しんでいる間に、親御さんがカフェでお茶をしながら待つ」といった使い方もできます。
esports Challenger's Park
esports Challenger's Park
韓国視察で見えた、日本のeスポーツ施設運営との違い
──これまで多くの企業のeスポーツ施設の立ち上げに携わってきたかと思いますが、最初に携わったeスポーツ施設はどこでしょうか。
2012年に秋葉原で開設された「ALIENWARE ARENA in アイ・カフェ AKIBA PLACE」です。もともと当社はアイ・カフェグループの保守を担当していたので、そのご縁でお声がけいただきました。
そこからDellさんがプロデュースを担当することになり、内装や設備を整えていきました。
施設には40台のPCを導入し、当時としてはかなり本格的なオンラインゲームのプレイスペースになったと思います。
──同タイミングで韓国にも視察に行かれたとのことですが、当時の韓国の状況はどう見えましたか。
韓国では、すでにPCバン(※)の文化がかなり根付いていました。日本は似たようなものだとネットカフェの形態が中心でしたが、韓国のPCバンはゲームセンターに近いようで、ファミレスの要素もありました。
※「PCバン」の「バン」とは韓国語で「部屋」という意味があり、インターネットが使えるコンピューターがたくさん揃っている場所を指す
オープンな空間でゲームを楽しめて、食事も充実しているのが印象的でした。
コロナ禍で一時的にその傾向が変わった時期もあったようですが、今はまた食事に力を入れているそうです。
日本との大きな違いは、利用料金の安さでした。1時間200円程度で利用でき、これは日本のネットカフェなどでは実現できない金額でした。
──韓国では、なぜそこまで安く運営できているのでしょうか。
PCやゲームのアップデート、利用者管理などがシステム化されており、効率的に運営できる体制が整っているからだと思います。
例えば韓国では、本人確認制度を活用し、利用者管理を効率化している面があります。を活用し、利用者管理を効率化しています。
また、フードについても、店舗側が自社で運営するのではなく、カフェチェーンのような外部店舗が入る形です。飲食部分を別経営にしていることも、運営のしやすさにつながっているのではないでしょうか。
挑戦が未来を変える──PCCSは「eスポーツ施設づくりの可能性」を広げる企業
──御社の企業カルチャーについて教えてください。
当社が大切にしているのは、「お客様の満足を創造する企業」であり続けることです。施設を利用する方はもちろん、取引先やその先にいる方々まで、関わる人すべてが笑顔になれるサービスを目指しています。
そのために重視しているのが、挑戦し続ける姿勢です。当社のようなまだ小さな会社は、立ち止まると成長が止まってしまうんです。
だからこそ「挑戦が未来を変える」という考えのもと、新しい情報を常に取り入れ、発信し、システムや仕組みづくりにも積極的に取り組んでいます。
もちろん、挑戦すれば失敗することもあります。ただ、その中の一つでも二つでも形になれば、会社の未来につながる。そうした前向きに挑戦できる姿勢を、企業カルチャーとしても大切にしています。
──これまでの御社の「挑戦」のなかで、最も大きな「挑戦」は何でしょうか?
これまではシステム提供が中心でしたが、現在は内装や空間全体をつくる領域まで事業を広げています。
もともと当社は設計会社やデザイン会社ではないため、内装には関わっていませんでした。ただ、これまで数多くのeスポーツ施設を見てきたことで、売れる施設とそうでない施設の違いがわかるようになってきたんです。
そこで現在は、提携先のデザイン会社と連携し、当社が持つeスポーツ施設のノウハウをデザインにも反映しています。例えば、eスポーツのプレイに影響が出ないよう、照明の位置や明るさなども考慮しながら空間を設計しています。
そのほか、情報発信の一環として「esports land Radio」というラジオ番組にも取り組んでいます。
──ラジオ番組ではどのような情報を発信されているのでしょうか?
「esports land Radio」では、出演者がそれぞれ話したいテーマを自由に発信しています。内容としては、ゲームのアップデート情報や最近のプレイ内容、日常の話などが中心です。
現在は月4回配信しており、1週目はVALORANTの選手やキャスター、2週目はアイドルやストリーマー、ほかにも格闘ゲームタイトルや『Identity V 第五人格』に関わる方など、週ごとに出演者やテーマを分けています。
当社はこれまで、eスポーツ業界の中では裏方として関わることが多く、あまり目立つ会社ではありませんでした。業界内ではPCCSの名前を知っている方もいましたが、もう少し自分たちの取り組みを知ってもらってもいいのではないかと考えるようになったんです。
現在はラジオ番組に加えて、チームスポンサーなどの活動にも取り組み、少しずつ外部への発信にも力を入れています。
イベント運営会社だけがeスポーツイベントを主催する時代は終わる?
──これから御社が作りたい未来を教えてください。
eスポーツを一過性のブームで終わらせず、持続的な文化にしなければならないと考えています。
そのためには、eスポーツを現状のような大規模なものだけでなく、もっと身近に体験できる機会を増やしていく必要があると考えています。例えば、公共イベントや地域イベントの中で、誰でも気軽に参加できるeスポーツ体験を広げていくことですね。
ここで重要なのは、そういうイベントを私たちのようなeスポーツ施設づくりやイベント支援に関わる事業者が運営するのではなく、一般の方々が自分たちで開催できるようになることです。
そうした機会が増えれば、eスポーツはもっと身近な存在になり、施設の必要性も自然と高まっていくはずです。
将来的には、専門施設だけでなく、公共施設や学校の中にもeスポーツを楽しめる場所があるような形でもいいと思います。その環境づくりに、弊社としても取り組んでいきたいです。
──公共施設や学校の中…例えば、高校のパソコンルームなどを、土日は一般の人も使えるスペースとして開放するようなイメージでしょうか。
そうですね。大切なのは、高齢者向け or 若者向けと分けるのではなく、同じ空間に高齢者と若者が自然にいる状態をつくることです。
ただ、そうした取り組みは民間企業だけでは難しく、学校や自治体との連携が欠かせません。今のままだと、eスポーツイベントは費用が上がる一方で、集客やスポンサー獲得が難しくなり、長く続かない可能性があります。
だからこそ、このタイミングでこれまでとは違う方向へ、舵を切る必要があるのではないかと考えています。
──確かに、アナログゲームのオフ会ならまだしも、eスポーツイベントをいち個人が開催できるイメージはまだありません。
そうですね。本来は、もっとコミュニティイベントでいいと思うんです。必ずしも大規模でパブリックなものである必要はありません。
たとえば『ストリートファイター6』のように、コミュニティイベントの開催基準が整っているタイトルもあります。そうしたルールの範囲内で、地域やプレイヤー同士が小さなイベントを開催しやすくなる土壌を整えたいと考えています。
事業者だけが大きなイベントをつくるのではなく、コミュニティの中から自然にイベントが生まれる状態ができると、eスポーツはどんどん広がっていくと思います。
──ありがとうございます。最後に御社が目指している未来に向けて、どのようなメンバーに入社してほしいと考えていますか。
当社は「お客様の満足を創造する企業」でありたいと考えています。
そのため、採用で重視しているのは、スキルや経験だけではありません。相手の立場に立って考えられること、知らないことに挑戦できること、現場で起きている課題に気づけること、最後まで責任を持ってやり切れることを大切にしています。
スローガンの「挑戦が未来を変える」の通り、完成された正解を待つのではなく、自分たちで考え、試し、改善していく姿勢を大事にしています。
特別企画:現役社員インタビュー
ここからは特別にPCCSで従事する、現役社員さんのインタビューをお届けします。
7年目で営業職の柴田さまです。
──前職は何をされていましたか。またどうして今の会社を選びましたか。
前職はLFS池袋esports Arena(※)の店舗責任者をしていました。
※「LFS(ルフス)池袋esports Arena」は、東京・池袋に存在した東日本最大級の本格的eスポーツ施設。2018年4月にオープンし、ハイスペックPCを約100台完備、プロの大会からコミュニティイベントまで幅広い用途で親しまれてきたが、惜しまれつつ2025年1月31日をもって営業を終了
LFS池袋では、店舗の管理業務や施設で開催されるイベントのサポートなどを担当していました。その中で、オフラインならではの楽しさや人と人のつながりの重要性を強く感じていたので、日本全国にオフラインの魅力を伝えていきたいと考えるようになりました。
オフラインの魅力を伝えるためには、全国にeスポーツで人が集まる場所やスポットを拡大することが必要で、まずは箱を用意する側で全国のオフラインコミュニティの活性化に関わりたいと考えて、株式会社PCCSに転職をしました。
──実際にどんな仕事をしていますか。
現在は営業として、これまでの業務で培った知見や経験を活かした新規開拓や既存顧客対応を主軸として案件創出に努めております。
昨年までは、専門学校の講師や当社が施工するイベント担当、PA関連の環境構築、全国の当社施工のeスポーツ施設のサポート窓口として、日々施設様と情報交換をしたり、トラブルの対応や複数の店舗を巻き込んだ運営施策などの提案をしていました。
──最もワクワクした仕事は何でしょうか。
いつもワクワクしているのですが、東京タワーにeスポーツ施設を作った案件が最もやりがいがありました。
その頃は、現在ほど現場経験やPA関連の知識も足りない時期ではありましたが、社長や上司、他の社員のバックアップを受けて、とてもかっこいい環境を構築できました。
オープンセレモニーでPAとして参加させていただきましたが、様々な方が来場されて、規模感や映像を含めた演出環境に感動されていました。
「とても良い仕事をできた」と達成感を感じました。
──大変だった仕事は何でしょうか。
案件ごとのステークホルダー間の調整や、お客様のビジョンの実現化に伴う、様々な問題の解決や調整は大変です。また、施設開業にかかる費用は安い金額ではない為、責任を持ってお客様の意思決定に寄与していく過程は大変です。
また、当社では「挑戦が未来を変える」を活動方針として制定しています。
挑戦によって、企業としての実績や新たなソリューションを創出してきました。大変ではありますが、企業価値の向上に寄与できているという点にやりがいを感じています。
──どんな人に向いていると仕事だと考えていますか。
「特定のゲームやチームが好き」という自分の軸をもちながらも、ゲームに関わる人を好きになれる人は向いていると思います。
いつも決まった事をやり続けるわけではなく、その都度、クライアントにとって一番良いものをどうやって提供するのか、クライアントの課題をどのように解決していくのかを考える。
自分事として捉え、主体的に考え、行動ができる人は活躍できると思います。
──最後にeスポーツを仕事にすることの面白さは何でしょうか。
eスポーツ業界は新しい産業なので、まだまだ未完成です。
未完成であるからこそ、型にはまった正解というのがなく、業界全体が切磋琢磨して、進歩している業界であるところが面白いです。
また、ゲーム仲間が仕事仲間になることもあり得るのが面白いところです。例えば、最近20年前に一緒にゲームをしていた友人とこの業界で再会して、共にビジネスをすることがありました。
形の無いものを形にする、新しい価値を提案できる広い可能性をもった業界領域であると感じています。
取材・文:小川翔太
eスポーツ業界の最前線で挑戦する事業開発スタッフを募集中!
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