eスポーツ国体は茨城県に「何を遺した」のか──いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会事務局(茨城県産業戦略部産業政策課)【自治体インタビュー】

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eスポーツ国体は茨城県に「何を遺した」のか──いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会事務局(茨城県産業戦略部産業政策課)【自治体インタビュー】

全国都道府県対抗eスポーツ選手権の様子



普段は表に出てこない「eスポーツを盛り上げる裏方さん」にインタビューする本連載。

今回は、いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会事務局(茨城県産業戦略部産業政策課)を取材しました。

茨城県は、2019年に初の「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」を開催した県ですが、そのレガシーはどのような形で継承されたのでしょうか。

県内にeスポーツに取り組む企業・学校が増えてきた


──本日はよろしくお願いします。茨城県といえば、初の「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」(以下、eスポーツ国体)を開催した都道府県として知られています。eスポーツ国体以降、県内でのeスポーツの認知の広がりは感じていますか。


感じています。

茨城県では、全国初となる「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」の開催を契機に、本県でのeスポーツの振興や関連産業の活性化、更にはeスポーツの活用を通じた県内産業の振興を図ることを目的として、2020年3月に官民連携の「いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会」を立ち上げました。

設立当初、協議会の会員は約70団体でしたが、現在では倍以上に増加するなど、県内でのeスポーツの認知度の広がりを実感しています。

ただ、それは県や協議会を中心に展開してきた取り組みだけではなく、eスポーツを取り巻く外的要因も大きいと思います。

昨年、サウジアラビアでは「Esports World Cup 2025」が開かれましたし、今年、名古屋で開催される「第20回アジア競技大会」では、eスポーツが正式なメダル競技として開催されることが決定されています。コロナ禍が落ち着き、オフラインイベントの開催が増えてきたことも要因の1つです。

そういった追い風もあり県内でもeスポーツに取り組む高校や企業も増えてきました。

しかし、まだまだ十分でないと感じています。

──「浸透してきた」と感じた場面と「まだまだ十分ではない」と感じた場面、それぞれ教えてください。


「浸透してきた」と感じたのは、「eスポーツ部」を立ち上げる県内企業が増えたことです。2024年に水戸で開催した「いばらきeスポーツリーグ」(県内企業の社員と学生が交流するeスポーツイベント)に参加したことをきっかけに、eスポーツ部を立ち上げた企業もあったと聞いています。

また、県内企業のeスポーツ部設立だけではなく、つくば市内にeスポーツを楽しめるカフェやeスポーツを楽しむことができる滞在型ホテルができるなど、eスポーツに関連する産業も増えてきました。

「まだまだ十分ではない」と感じるのは、「eスポーツ関連産業の事例」は増えてきてはいるものの、それぞれが「点」として活動しているのが現状だからです。これらを繋げて「線」とし、更に「面」としての広がりを作っていくことが今後の課題であり、協議会がその役割を担えればと考えております。

また、県内の学校からは「保護者の方々の理解が得られづらい」という話も聞いておりますので、eスポーツの認知度向上と裾野を拡大に向けた取り組みを継続していくことも必要だと感じております。

──eスポーツ国体については、まだまだ課題が多い印象です。eスポーツ国体の先輩として「こうなれば自治体がeスポーツ国体をやりやすい」などご意見をいただけますか。


同一のタイトルで大会やイベントを継続して開催できる環境があると良いなと感じています。

スポーツの中に野球・サッカー・テニスといった種目があるように、eスポーツも様々なタイトルがあります。

eスポーツの場合、毎年のように流行りのタイトルが変わります。しかし、毎年タイトルが変わるのは、eスポーツ国体に参加する人にとって、やりづらいのではないかと思います。

定期的に開かれるタイトルの大会があれば、そのタイトルを目標にすることができますが、タイトルの流動性が高いのが現状です。

──タイトルの流動性が高いことが、国体の盛り上がりにも影響しているのかもしれません。またeスポーツ国体で、その地域に周知されたeスポーツタイトルが、その後も継続されるとは限らないので、地域にeスポーツが根付くこともないと。昨今は『VALORANT』『リーグ・オブ・レジェンド』『ストリートファイターⅥ』など、ある程度は定着してきた印象がありますが、それでも定期的にタイトルの入れ替わりはありますね。


はい。その点、高校生向けの「STAGE:0」や「NASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権」は、いま挙げていただいたタイトルで継続して開催していることもあるのか、毎年、安定した開催が実現されており、比較的規模の大きい大会として、学生さんも目標にしやすいのでしょう。

「eスポーツ好き」だけではなく「eスポーツをあまり知らない人」に広めるのが目的


──eスポーツタイトルに関する話が出ましたが、協議会のイベントでは、どのような基準でタイトルを選定していますか。丁度、この間、茨城県で開催された「第3回 中学校eスポーツ選手権」の担当者様に「採用タイトルで『ポケモンユナイト』を選んだ理由」を聞いたところ、「学生に馴染みがある」「保護者からも理解を得られやすい」という回答でした。


イベントの目的にもよりますが、eスポーツの認知度向上や裾野拡大を目的としている場合は、多くの方に参加してほしいので「参加のしやすさ」を一番に考えます。

協議会で主催するイベントですので、誰もが知っていて安心してプレイできるような、特に若者にとって馴染み深く人気があるタイトルが望ましいですね。

──集客については、参加者だけでなく観覧者を集めるのも必要ですが、何か工夫されていることはありますか。


県や協議会では、eスポーツが好きな方はもちろん、eスポーツを知らないあらゆる世代の方々にもeスポーツに興味を持ってもらいながら、eスポーツの裾野の拡大や県内産業の振興を図っていくことを意識して様々な取組を展開しています。

2026年2月には、eスポーツの裾野拡大を目的に「IBARAKI GAMING DAY」を開催しました。

このイベントは、eスポーツプレイヤーによるトークショーやエキシビジョンマッチ、交流戦に加えて、誰でも参加できるeスポーツ体験、協議会の会員企業や県内の学校等におけるeスポーツの取組を紹介するブースの設置など、eスポーツに関わる多彩なプログラムで構成されています。

特に今回は、筑波大学や県内のeスポーツコミュニティと連携し、同時開催イベントを行うとともに、事前申込がなくても当日無料で参加できる体験会なども設け、会場全体であらゆる世代の方に楽しんでいただける場づくりを心掛けました。

また、県や市町村の広報誌、ホームページやSNSの活用など、多様な媒体を使って、eスポーツのことは知らないけれど、関心はあるという方に向けて周知を行いました。

IBARAKI GAMING DAY 2026の様子



茨城県内企業の認知度向上にeスポーツを活用!


──茨城県のeスポーツイベントとして代表的なものは何でしょうか。


先ほどお話した「IBARAKI GAMING DAY」と、「いばらきeスポーツリーグ」(県内企業の社員と学生が交流するeスポーツイベント)の2つが、茨城県のeスポーツイベントの柱だと考えています。

「いばらきeスポーツリーグ」は、元々企業同士をメインとした交流戦の形で開催していましたが、協議会の会員企業から「eスポーツを就職活動に活かしたらどうか」とご提案いただいたことで、昨年度から学生層にアプローチできるイベントに変えていきました。

昨年度の参加企業からは、大会に参加したことをホームページに載せたところ、採用に繋がった事例も生まれたと聞いています。

──茨城県の企業は、どのような採用課題を抱えているのでしょうか。


多くの企業から「企業の知名度が低く、応募が集まりづらい」という話が出ます。

首都圏の転入超過が続いているとの報道が、繰り返し報じられていますが、大学への進学である程度首都圏に出ていくことはやむをえないと考えています。その後も地方に戻らない要因のひとつとしては、若者にとって、魅力的な就職先となる企業を地方に見つけにくいことが挙げられるのではないかと思います。

特に、地方の中小企業は、全国的には企業名が知られておらず、学生たちの就活時の選択肢に上がりにくい状況にあります。

一方で、eスポーツは若者に人気があるので、適切に活用することで、企業が狙いたい若者層にアプローチできます。そういった背景もあり、協議会の会員から「採用活動にeスポーツを活用できないか」という話を受けました。

──企業と学生が交流した「いばらきeスポーツリーグ」ではどのような工夫をされましたか。


参加してくれた学生に「企業名を覚えてもらえる」ような工夫をしました。

まず、「企業名」をチーム名として参加してもらいました。また、対戦の前に、ステージ上の大型スクリーンに対戦する企業紹介のスライドを投影し、MCから紹介してもらう形式にしました。

スライドも読み上げる原稿もあらかじめ参加企業に作成してもらい、対戦の進行が間延びしないよう工夫しています。

さらに、リーグ戦を勝ち上がると、MCから企業の特徴や職場の雰囲気について質問してもらい、企業の紹介をより深く行ってもらえるという特典を付けました。もちろん、参加してくれたすべての企業をステージ上で紹介できるよう、リーグ戦の組み合わせも考えました。

こうした色々な工夫をしたことで、学生に、対戦した企業の「企業名」を印象付けることを狙いました。

参加した学生からは、「この規模のeスポーツイベントが県内で開催されるのは嬉しかった」「企業PR等の時間を通じて、県内の企業について知ることが出来た」といったコメントもいただきました。

いばらきeスポーツリーグ2025の様子



eスポーツの取り組み、今後の展開は


──今後、eスポーツに関する取り組みをどのように展開していく予定ですか。


本県におけるeスポーツの振興や関連産業の活性化を図っていくために、まずは、eスポーツの裾野を拡大していくことが重要です。

県内におけるeスポーツの裾野は着実に広がりつつありますが、その認知度は未だ限定的であると認識しておりますので、引き続き、PDCAを回しながら、取り組みをブラッシュアップして、eスポーツに係る機運醸成や県民の理解促進に力を注ぎたいと思います。

また、世界的に市場が伸びており、若年層に人気の高いeスポーツを活用していくことは、県内の産業の振興に向けた有効な手段のひとつであると考えております。今後は、本県におけるeスポーツ産業の更なる活性化に向けて、新たなビジネスチャンスの創出に繋がる取り組みも進めていきたいと思います。

また、県内のeスポーツコミュニティや他の自治体の皆様とも情報交換をして、お互いの良いところを取り入れ合いながら、一緒に高め合っていきたいです。

おまけ:茨城県は果物王国としても知られていて、メロンが名産


──貴重なお話をありがとうございました。せっかくの機会なので、協議会さんが感じる茨城県のおすすめスポットや食べ物を教えてください。私も今後のeスポーツイベントと合わせて、是非とも立ち寄りたいです。


国営ひたち海浜公園は「死ぬまでに一度は見たい絶景」と言われるほどの人気スポットです。ゴールデンウィークの頃にはネモフィラ、秋にはコキアが見頃を迎えます。海外の方もよく訪れていますね。

日本三名園の一つである偕楽園も有名です。梅の時期には梅が綺麗に咲くのでおすすめです。歴史的な施設も多く、弘道館なども見どころの一つです。

個人的には、鹿島神宮は雰囲気がとても良い神社で、私もお気に入りの場所です。奈良の春日大社創建の際に鹿島神宮から神様をお迎えしたという伝説が残っています。

こういった観光地をメタバース化して、『フォートナイト』などのイベントにしても面白そうですよね。

食べ物だと、茨城県は果物王国としても知られていて、特にメロンが名産です。
他にも、個人的に好きな栗やなしなども多く採れるのでお勧めです。

茨城県には観光地としての魅力もたくさんあるので、eスポーツイベントと合わせて、ぜひ多くの方に訪れていただきたいです。

──いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会さん、本日はありがとうございました!



取材・文:小川翔太、松永華佳

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