株式会社プレイブレーン代表取締役 マイク・シタール氏 【トップインタビュー】

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株式会社プレイブレーン代表取締役 マイク・シタール氏 【トップインタビュー】

普段は表に出てこない「eスポーツを盛り上げる裏方さん」にインタビューする本連載。

今回は「League of Legends Japan League(LJL)」の企画運営で有名なeスポーツ企業、株式会社プレイブレーン(※)の代表取締役マイク・シタール氏を取材しました。

※eスポーツの企画・運営、配信、マーケティングに特化したクリエイティブ企業。eスポーツイベントの企画・運営や大規模なライブ配信の制作を手がけるほか、ゲーム関連のイベント運営、商品開発、分析サービス(PLAYDATA)、ポータルサイト(TAIYORO)の運営なども行っている。



前例のない「eスポーツ事業」への挑戦──自分たちで考える必要があった


──本日はよろしくお願いします。貴社は2016年に創業されていますが、当時eスポーツ事業を手がける企業が少なかった中、どのような経緯で参入したのでしょうか。


プレイブレーンを立ち上げる前、2007年に「UltraSuperNew」というクリエイティブエージェンシーを立ち上げました。そこでは、アクティビジョン・ブリザードやSupercell、Electronic Artsなど、ゲーム会社のブランディングの仕事を手がけていました。

私自身、ゲーム好きで、格闘ゲームなら『鉄拳』をよく遊んでいました。過去にシドニーのゲーム会社で働いていた経験もあったので、ゲーム事業にフォーカスするために、プレイブレーンを立ち上げました。

──創業当初は「ゲーム事業」としてスタートされたのですね。


そうですね。創業当時は「ゲーム事業に特化しよう」と考えていたので、eスポーツ業界に参入するつもりはありませんでした。

やがてクライアントから「eスポーツのクリエイティブ制作をお願いできますか」といったリクエストが来るようになったことがきっかけで、徐々にeスポーツに参入していきました。

最初は、配信関連など、何をすれば良いかわからなくて、ベーシックなところからスタートしました。現在では、クライアントの要望に応えながら、チームのスキルもどんどんレベルアップしています。

──特にどのようなことに苦労されましたか。


当時、新しい業界だったので、全てを自分たちで考える必要がありました。

例えば「フィジカルスポーツでの成功事例、海外のeスポーツの成功事例の中で、日本のeスポーツ事業に転用できるアイデアがないか」を検討しました。

日本と海外の観戦スタイルの違い──日本は良くも悪くもフォーマルである


──実際に転用したなかで、上手くいった事例と失敗した事例を教えてください。


海外と日本の文化の違いには、常に苦労しています。

海外のeスポーツ大会はカジュアルな雰囲気がありますが、日本のeスポーツ大会の雰囲気は、良く言えば「真面目」、悪く言えば「硬い」です。

例えば、海外では大会中に「うぉー!」と歓声を上げて盛り上がりますが、日本のファンは基本的に静かに観戦していますよね。

弊社では、少しでもeスポーツ大会を海外スタイルのような、カジュアルな雰囲気にできないか試しています。しかし、上手くいった場合もあれば、そうでない場合もありました。

──他に日本のeスポーツ文化の特徴はありますか。


「国内外問わず、トッププレイヤーのプレイに熱狂できる」という点でしょう。

例えば、先日の「VALORANT Champions Tour(VCT)」では、弊社は物販を担当していたのですが、日本のチームが決勝に残っていなかったのにも関わらず、会場は日本人のお客さんで溢れていて、大盛り上がりでした。

ホームチームが不在でここまで盛り上がれるのは、日本の特徴です。『リーグ・オブ・レジェンド』だと、韓国のT1などの有名チームが来日したら、大盛り上がりになるでしょう。

──逆に日本のeスポーツイベントやゲーム文化の中で、海外に輸出できる要素やフォーマットは何でしょうか。


日本の強みである「アニメ」「ゲーム」のIPの要素を活かすべきだと考えています。

弊社も日本の強みを活かしたイベントを企画して海外に輸出することにチャレンジしています。弊社のミッションは「ゲームを通じて日本と世界をつなぐこと」なので、eスポーツイベントの企画運営を通して、日本の良さを海外に発信していきたいと考えています。

Riot Games社とパートナーシップを組み、2018年から全ての運営を担当


──これまで多くのeスポーツイベントの企画運営に携わってきたかと思いますが、その中でも最も印象に残っているイベントやエピソードを教えてください


沢山ありますが、特に印象深いのは、2023年の「LJL」のグランドファイナルです。

弊社は、Riot Games社の『リーグ・オブ・レジェンド』の国内イベントに初期から携わっています。LJLは日本で6年以上の歴史を持つプロリーグですが、弊社はRiot Games社とパートナーシップを組み、2018年から運営を行っています。

最初から規模の大きいイベントはできないので、少しずつ、ステップアップしながら規模を大きくしていき、2023年のLJLファイナルは、4000人規模の大会になりました。

──貴社が「最初に携わったeスポーツイベント」は何でしょうか。


『クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)』のリリース直後に、初の大会を企画運営しました。

Supercellのサポートの元、クラロワのマーケティングも兼ねたイベントでした。

また実は、以前の会社でもeスポーツ大会の企画運営に携わっていて、2013年、FIFAのインターナショナル大会を日本で実施しました。

そのときのノウハウが今の事業でも活かされています。

──LJLのような大規模な大会運営の他に、eスポーツのエコシステムを支えるために開発・提供しているプロダクトにはどのようなものがありますか?


スポーツの観戦をもっと身近に、そして簡単にするためのプラットフォームとして、eスポーツの情報を網羅するカレンダー「Taiyoro」を提供しています。

また、ゲーマーが愛するアイテムを輸入・販売する通販サイト「FUTAROKU」の運営も手がけています。

求めるのは「ゲームへのリスペクト」と「自発的なパッション」を持つ人材


──​​どんな方針で人材採用しているかなど、御社の企業カルチャーとして特徴的なものや何か意識していることがあれば教えてください。


いくつかのポイントがありますが、第一に「ゲームへのリスペクトがある」ことを重要視しています。
また、誰かの指示を待つのではなく、自らの好奇心を事業の推進力に変えられる、「自分でパッションを見つけられる」ことも大切な要素です。

これらの資質がなければ弊社には合わないです。

──スキルについてはいかがでしょうか。


もちろん、eスポーツ関連の経験やスキルがあればなお良いです。しかし、これは後天的に身につけられる部分なので、やはりゲームへのリスペクトの気持ちの方が重要です。

また、1人が複数のスキルを持っていると助かりますが、それぞれが何かのスペシャリストであることが理想だと考えています。

組織としては、企画が強いだけでも、マーケティングが強いだけでも良くないので、チーム全体として、スキルの総量やバランスを大切にしています。

──「会社をこうしていきたい」「eスポーツ業界をこうしていきたい」といった、御社のこれからのビジョンについて教えてください。


私たちは今、ゲームカルチャーを、「社会的に認知され価値を認められる主流文化へと確立すること」を企業の核となる目標として掲げています。

現在でも残念ながら、「ゲーム」という言葉に対して、「子どもの遊び」「不真面目な趣味」といった古い偏見を持つ層が一定数存在します。しかし、この古い認識は終焉を迎えつつあります。

現在、40代、50代といった社会の中核を担う世代のゲーマーが急速に増加しています。これは、ゲームが特定の年齢層だけのものではなくなった証と言えるでしょう。

私たちは、この変化を後押しし、「誰もがゲーマーであることを誇りに思える世界」へのカルチャーチェンジを目指しています。

なぜ日本では「趣味がゲームです」を公言しづらいのか


──日本はeスポーツへの偏見が著しく高いのでしょうか。ゲーム大国であるがゆえに「良くも悪くも『ゲーム=遊び』のイメージが根付きすぎている」という指摘はよく耳にします。


日本は真面目な人が多いです。

国にもよりますが、海外の人たちは「私はアニメが好きです」「私はゲームが好きです」と、会社でも堂々と公言します。

日本人は、そういう趣味を内緒にする傾向が強いです。会社の面接でも「趣味がゲームです」というと、多くの場合、印象が悪くなるでしょう。

しかし今の時代、ゲームが好きな人は、スキルが高い傾向があると考えています。具体的には、デバイスについての理解やITスキル、ゲームで勝つための論理的思考や要領の良さなどが備わっていることが多いです。

──最後に、この記事を通して、発信したいことがあればお聞かせください。


これから弊社では、eスポーツのイベントディレクションや運営、企画だけでなく、マーケティング、マーチャンダイズの事業にも力を入れていきます。

それらの領域に強い方、興味のある方の応募をお待ちしています。

また、来年にも『リーグ・オブ・レジェンド』のオープン大会があります。参加を検討しているプロeスポーツチームやアマチュアチームは、ぜひご連絡ください。

──マイクさん、ありがとうございました!



取材・文:小川翔太、松永華佳