【インタビュー】国内eスポーツシーンにおけるコーチの先駆者、XQQが切り拓いてきた道

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【インタビュー】国内eスポーツシーンにおけるコーチの先駆者、XQQが切り拓いてきた道

eスポーツ専門の求人メディア「eek(イーク)」では、eスポーツに関するさまざまな仕事にフォーカスした記事をお届けします。第2回は、eスポーツチームのコーチとして数々の実績を持ち、現在は「ZETA DIVISION」(以下、ZETA)所属のコンテンツクリエイターとして活動するXQQさんです。

XQQさんは、『オーバーウォッチ』で選手からコーチに転向したのち、『レインボーシックスシージ』(以下、R6S)や『VALORANT』でコーチとして活躍。2022年には「ZETA DIVISION」VALORANT部門のコーチとして、国際大会「VCT 2022 Stage1 Masters Reykjavík」で世界3位という歴史的快挙を成し遂げました。

今回は、国内eスポーツシーンにおいて、まだコーチという役割が浸透していなかったころから、コーチとして活躍してきたXQQさんに、これまでどのような試行錯誤を経てきたのかについてインタビュー。そして、現在のコーチ休業期間を経て、今後どのような目標を叶えたいかについても聞きました。

2018年、日本ではほとんど前例がなかったコーチに転向


――XQQさんのこれまでの主な経歴を、順にお聞きしていきたいと思います。まずはコーチになる前、プロ選手になった経緯から教えていただけますか?


XQQ:

僕がプロになる前は、『Battlefield』シリーズをプレイしていて、国内大会で優勝したりしていました。その後、『オーバーウォッチ』に似た『Paladins』というゲームが出て、それをそのとき『Battlefield』を一緒に遊んでいた人たちと始めたんです。

そこで当時、のちに「DeToNator」でチームメンバーになる、YamatoNさんやdelaveさんとマッチングしたんですね。その試合で僕のプレイが印象に残ったのか、「一緒にチームを組みませんか」と誘われて、それがきっかけで『オーバーウォッチ』のプロ選手になりました。

――その後、どのようなきっかけでコーチに転向することを決めたのでしょうか?


XQQ:

プロとして2016年から約2年プレイしていたなかで、韓国やヨーロッパ、アメリカなどの海外チームには、コーチが当たり前のようにいることを知りました。そのコーチたちは、『オーバーウォッチ』が出る前から、『StarCraft』などの別タイトルをプレイしてきていて、そこで得た知識や経験を活かしてコーチングしていたんです。

実際に自分が「DeToNator」にいるときに、『Battlefield』ですごく考えていて上手いなと思っていた人を、一度コーチとして呼んで試したことがあって。その人は『オーバーウォッチ』を少し触ったことがあるくらいだったのですが、すごく良かったんですね。そのときの経験も含めて、今後日本が世界で戦えるようになるためには、コーチという存在が必要だと考えるようになりました。

それと同時に、自分が選手として続けていって、いつか壁に当たってプレイできなくなったとき、どうやって生活していくんだろうとも考えていました。当時、選手というと20代後半、27歳くらいには引退するものでした。自分は学校にもあまり行っていなかったので、それくらいで引退したら、その後はどうなるんだろうと。

それを考えると、コーチを早く始めてどんどん経験を積んでいったほうが、もっとこの業界に長く居続けられるかもしれない。であれば、選手としてではなくコーチとして、世界で戦える日本チームを目指すのもいいんじゃないかと考えるようになりました。

――実際に『オーバーウォッチ』のコーチとして活動を始めたときのことを教えてください。


XQQ:

当時、プロチーム「Unsold Stuff Gaming」(現「VARREL」)のオーバーウォッチ部門に「USG Supreme」というチームがありました。JasperやPepperなど、今でも活躍している人たちが所属していたチームなんですが、そこで少しコーチをしてみたら手応えがあったので、コーチを本格的にやってみようと考えました。

そのとき、自分の『オーバーウォッチ』の知識や理解度には自信があったので、日本で一番強いチームでやりたいと思ったんですね。それで、当時ta1yo君などが所属していた「CYCLOPS athlete gaming」(以下、CAG)に、コーチをやらせてほしいと自分から営業をかけて、加入が決まりました。

それが2018年のことで、そのころ日本では他にコーチがいなかったので、後から聞いた話では、チーム側も「本当に入れていいのか?」と疑問に思っていたそうです。でも、僕は独学だし至らないところも絶対にあるから、僕が選手にフィードバックするだけでなく、自分のやり方に対してもフィードバックがほしいと伝えていたんです。そういう相互関係のなかでやっていきたいと話していたので、いい方向に進んでいきました。

――当時は『オーバーウォッチ』以外でも、国内でコーチがついているチームは珍しかったですか?


XQQ:

『League of Legends』(以下、LoL)では、国内リーグの「League of Legends Japan League」(LJL)が開催されていて、そこでは韓国人コーチがいたりしましたが、FPSタイトルにはほとんどいませんでした。『Counter-Strike: Global Offensive』(CS:GO)では、同時期くらいから「Absolute」でJUNiORさんがコーチをしていたかもしれませんが、それ以外はほぼいなかったと思います。

フィジカルスポーツからも学びつつ、続けてきた試行錯誤


――2019年には『オーバーウォッチ』から『R6S』のコーチに移っていますが、これにはどのような経緯があったのでしょうか?


XQQ:

『オーバーウォッチ』は人気のタイトルでしたが、公式大会のリーグ化によって、チーム運営の目線では、オーバーウォッチ部門を持っているメリットがあまりなくなってしまったんです。それで、部門が解散する流れになり、『オーバーウォッチ』を続けるにはアマチュアになる必要がありました。

僕はそのとき地元から大阪に出てきて活動していたので、実家に戻らず独り立ちしたいという願望があったんですね。そういう状況で、チームから他の部門でコーチをやってみないかという提案をもらい、R6S部門に転向しました。なので、夢を諦めて別タイトルに移った、と言えるかもしれません。「CAG」のオーバーウォッチ部門は、すごく結果を出していたので、「こんなに結果を出していてもなくなるんだ」という無力感がありました。

それと同時に、『R6S』はあまり経験がないタイトルだったので、なおさらコーチとしての能力を引き出さなければならないという気持ちでした。とはいえ、今振り返れば疑問に思うところもあるコーチングの仕方だったとは思います。

――試行錯誤もたくさんされてきたと。そのころゲームの知識以外で、コーチをするために勉強していたことはありましたか?


XQQ:

かなり本を読みました。コーチとして前例にあたる人がいないし、いても海外なので、なかなか参考にできません。なので、フィジカルスポーツのコーチや監督が出している著書やインタビューを読んで、コーチとしての考え方を学んでいきました。コーチは、自分の意見を伝えたり人の意見を聞いたりする必要があるので、それに関連する心理学やカウンセリングの本も読んだりしましたね。

――どんなコーチになりたいかといった、思い描いていた像はありましたか?


XQQ:

そのとき一番イメージに近かったのは、ラグビー日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズさん。その人自身の著書や、その人について書かれたものを多く読んでいました。それに加えて、ラグビー日本代表のメンタルコーチをしていた荒木香織さんの本も読んで、参考にしていました。

実は、のちに荒木さんは「ZETA」VALORANT部門のメンタルコーチにもついてくださって、個人的にすごくうれしかったですね。ただ、そういったフィジカルスポーツでの内容はいろいろと参考にしていたものの、「これはeスポーツに落とし込むには違うな」と思う部分も結構ありました。

――例えばどんなところがフィジカルスポーツとは違うと感じますか?


XQQ:

フィジカルスポーツはやはり体育会系なので、昔からずっとスポーツを続けてきていて、試合までの流れやルーティンにしっかりと向き合ってきた人が多くいます。でも、eスポーツはゲームを楽しむ延長線上につながっているので、そこまで取り組み方を個々が考えてやってきているとは限りません。

発破をかけるにしても、体育会系で揉まれてきた経験がない人にとっては慣れないことなので、そのまま使っても逆効果になる可能性があります。なので、いろいろと取捨選択しながら参考にしてきました。

戦うステージがより上がった『VALORANT』での変化


――2020年からは『VALORANT』のコーチとして活動されていますが、この移行の経緯についても教えてください。


XQQ:

『R6S』はもともと好きなゲームで、コミュニティも優しい人が多いし、選手を含めて一緒にやっていた人たちもすごく好きで、今でもご飯に行くくらい仲がいいんです。それくらい、好きな人たちと一緒に仕事ができる環境でした。

ただ、コーチの仕事として考えたときに、『VALORANT』がリリースされたら、移行したいという話は前々からしていて。なので、契約交渉のタイミングで「CAG」から離れることを決め、そのタイミングで「Absolute JUPITER」(現「ZETA」)から誘われたという経緯でした。

――『VALORANT』に移行しようと考えていたのは、どういった理由からでしたか?


XQQ:

まず1つは、やはりRiot Gamesという大きなメーカーが開発する新作タイトルだったことです。さらに、プロとして活動する目線から見ると、Riot Gamesは『LoL』での公式リーグの実績があり、『VALORANT』でも間違いなくそういう大会が開催されるだろうという期待がありました。

あと、これは『R6S』も近いんですけど、アビリティを使って戦うゲームがすごく好きで。5vs5の爆破系FPSも好きなジャンルで、『Battlefield』以外に『Counter Strike』シリーズもずっとプレイしてきていたので、自分のやりたいこととマッチしていたのが理由です。

――3つのタイトルでコーチをしてきたなかで、最も試行錯誤があったと思うのはどの時期ですか?


XQQ:

時期でいうと、最初が一番いろいろやっていましたね。基本的には、同じチームでシーズンを戦ってる間はあまりやり方を変えないのですが、チームやメンバーが変わるタイミングで新しいことをしています。

『VALORANT』に来てからであれば、SugarZ3ro、TENNN、Depが入ったタイミングでやり方を変えたりとか。特に『VALORANT』では、戦うステージがより上がったので、それに合わせて変えてきた部分もあります。

――変えてきた部分として、例えばどんなものがありますか?


XQQ:

例えばコーチングのスタイルだと、当初は自分の考えに基づいてプレイしてもらうことが理想だと考えていて、自我を出したコーチングをしていました。逆に、直近3年くらいは、個々のポテンシャルを引き出すために、選手がどうしたいかを優先していたんです。

でも今は、プレイヤーに任せて自分の考えを抑えてしまったら、それは別に自分である必要はないなと。だから、次にコーチをするとしたら、上手くそこのバランスを取って、お互いの意見を取り入れながら良好な関係を築いていくのがベストだと思っています。

あとは、「ZETA」ではアナリストとコーチが合わせて3人、もっと言うとGC部門やACADEMY部門から借りていたときもあったので、多いときは4人いたんですよ。今までは自分1人で仕事をするのが当たり前でしたが、『VALORANT』になってからは複数人の体制になって、人に仕事を振る能力も必要になってきました。

世界レベルになってくると、大会に向けた資料作成などの事務的な作業もすごく増えます。でも、それをやっていかないと、そもそも土俵にすら上がれない。なので、どんどん関わる人ややるべきことが増えて、そのなかで変わってきた部分も大きいです。

多岐にわたるコーチの仕事、求められる素養とは?


――ここまでのお話を聞いていても、コーチの仕事はかなり多岐に渡る印象ですが、改めてどのような業務を行っているのか教えていただけますか?


XQQ:

業務はかなり幅広いですね。チームにはマネージャーもいますが、チームをまとめるためには、マネジメントも込みでやっていく必要があります。それから、練習のスケジューリングやスクリムの日程調整など。これはアシスタントコーチに頼んでいる人もいますね。

あと、アナリスト業務も完全分業とはいかず、資料作成をお願いしても、それを見てしっかりと頭に入れなければなりません。さらに、自分が欲しいと思う定点(再現性が高いアビリティの使い方)や、新しいキャラクターの使い方などを研究するために、自分でもプレイします。本当にやるべきことが多くて、思っている以上に暇がない仕事ですね。

――最近では、複数のコーチがついているチームも増えています。チームにもよると思いますが、一般的にはどう役割分担されているのでしょうか?


XQQ:

たくさん業務を抱えていると、それぞれ特化した仕事ができなくなるので、仕事量を分けるイメージですね。一般的には、ジェネラルマネージャーに近い仕事をするのがヘッドコーチ。マネジメント業務がメインで、方針や練習内容など、チームをどうつくっていくかを決めます。その下につくコーチは、戦術面であったり、ミクロやマクロでのパフォーマンス強化を担うことが多いです。

複数のコーチをつける理由の1つとして、明らかに人手が足りないタイミングがくる、というのもあります。例えば、昨年の「VCT Pacific」では試合が週に1回でしたが、最終週のスーパーウィークでは週に2回の試合がありました。そうすると、1週間に2試合分の資料を作ることになります。

対戦相手の5マップ分くらいの情報を収集して、その資料を作るので、アナリスト1人では足りず、コーチも対応しなければなりません。なので、普段なら少し余るくらいの人手がいた方がいいんですよね。あとは、人数が多いほど、自分では考えつかない意見が増えるというメリットもあります。

――コーチに必要な素養やスキルを含め、「こういう人が向いている」というイメージがあれば教えてください。


XQQ:

コーチは自分たちの試合映像を見返すだけではなく、情報収集のために他チームの試合映像を、世界大会から小さな大会まで、かなりの量を見る必要があります。僕は選手だったときから、いろんな人のプレイを見るのが好きだったのですが、それが好きでない人には難しいかもしれません。

フィジカルスポーツの世界では、選手のフィジカルによっては、できないこともたくさんありますよね。でも、これは僕がすごく好きなポイントなんですが、オンラインゲームの世界では、強いチームがしている強い動きを、真似ようと思えばいくらでも真似られます。ということは、自分たちが知らない情報を相手が知っていた場合、それだけで一歩遅れてしまうということです。

メタ構成と呼ばれる流行りの構成も、使っている人が多ければ多いほど、いろんな研究や経験が集約されて集合知が生まれます。でも、情報収集できていなければ、強い構成を使う意味がなくなってしまう。ものすごく発想力があって、自分で開発できる人ならいいですが、なかなかそうもいかないので、やはり試合を見て座学する時間はとても重要です。

あとは、面倒見の良さでしょうか。eスポーツは選手が若くて、それでいて過酷なので、イメージとしては学校の先生、部活の顧問のような対応が求められる場面も多くあります。eスポーツは、ゲームを楽しく遊んでいるうちに上手くなってプロになる、というルートがあるので、必ずしも全員がちゃんと仕事として捉えられているとは限りません。そうしたなかで、いろいろ教えたりしながら、一緒に活動していける力が必要です。

さらに、eスポーツはチームの人数が少ないので、一人ひとりの選手とより近い関係になります。なので、人と話して仲良くなっていくような、コミュニケーション能力はあるに越したことはないと感じますね。


コーチとして楽しさもつらさも感じた「VCT Pacific」


――今までコーチを続けてきて、一番やりがいを感じたのはどんなときでしたか?


XQQ:

昨年の「VCT Pacific」で、練習したことが刺さったときですね。毎週コンスタントに試合があるなかで、アナリストと「こうしたら刺さりそうだよね」と対策を話し合って、実際の試合で上手くいったとき。忙しくもありましたが、一番楽しかったです。

――逆に、今までで一番つらかったのはどんなときですか?


XQQ:

それも同じく「VCT Pacific」です。日本開催の「Masters Tokyo」に日本チームとして絶対出たいという思いがあったのですが、出場を逃してしまい、かなりメンタルに来ました。週6で活動していて、試合の翌日は休みなのですが、次の週も試合があるからその準備をしなければいけなくて……という緊迫した生活を2ヶ月くらい送っていたので、体力的にもしんどかったですね。

――過去に『R6S』でも、日本チームが世界ベスト4の結果を残した翌年、日本チームが日本開催の国際大会への出場を逃すという苦い経験がありました。それを意識してしまう部分はありましたか?


XQQ:

僕は実際それがものすごく大きくて、「Masters Tokyo」には死んでも出たいと思っていました。応援してくれるファンのためにも、日本開催の国際大会に日本チームが出るところを見せたい気持ちがすごくあったので。でも、今思えば勝手に背負いすぎていたところもあったのかなと。もっと普通にやっていればよかったなとも思います。

睡眠時間を削って、対策のために見る動画を増やして、自分たちのチームの改善もして……と自分を追い込んで仕事をしていました。でも、そのやり方や考え方が本当に合っているかどうかって、やっている最中はわからないんですよね。終わってみると、もっとしっかり寝て、いろいろ取り組めていればよかったのかなと思います。

国内コーチのレベルを向上させるために必要なことは?


――これまでの経験から、海外チームと国内チームで比べたときに、コーチに差を感じるポイントはありましたか?


XQQ:

以前までは、例えば『VALORANT』で言うと、ヨーロッパやアメリカのチームは、ちゃんと流行りの強い構成を強いやり方で使えている一方、日本チームはなぜこんなに独自路線なんだろうとか、構成だけ真似していてもったいないなとか、そういうことも感じていました。

でも最近は、海外のコーチが入ってきていることもあり、強い構成をちゃんと取り入れて、それに合わせた強い戦い方までしっかり抜き出せているチームが増えました。そのうえで、さらに自分たちに合わせたアレンジを加えているチームも結構見かけるので、国内シーンで戦っているコーチのレベルも上がってきたと思います。海外に比べるとコーチの数自体が少ないので、比較が難しいですが……。

――国内ではコーチの数自体が、まだ足りていないということでしょうか。


XQQ:

最近は海外から呼ぶことが増えているので。もちろん海外で良い成績を残したコーチを呼ぶことは、全然間違っていないのですが、日本人コーチが結果を残して抜擢されるのは、なかなか難しい。チームに関わることなので難しい面もありますが、その人の能力を判断できるポートフォリオ的なものをあまり出す人がいないので、少しもったいないなとは思います。

僕は昨年まで大会に出ていたので、他チームとはあまり仲良くしないようにしていたのですが、今は休業中なのでいろんなコーチと話してみたいですね。自分はずっと相談できる相手がほしいと思っていたので、今コーチを目指している人や、まだコーチとしてのキャリアが浅い人の相談相手にもなれたらいいなと感じています。

――国内でコーチのレベルをより上げていくために、必要だと思うことはありますか?


XQQ:

情報交換できるコミュニティがあるといいのかなと思います。やっぱりコーチはチームのいろいろな情報を知っているので、どうしてもお互いに交流しづらいんですよね。でも、例えばアナリストのgya9さんは、アナリスト向けのDiscordコミュニティをつくったりしています。コーチ同士が話すことの難しさはすごく感じているので、「コーチってこういう仕事ができるといいよね」と話せる機会があればいいなと思っています。

ただ、例えばサッカーだと養育講習に通って、ライセンスを取ってチームのコーチになるという段階を踏むので、そこで基礎の部分が学べるんですよ。でも、僕はそういう経験がなくて、自分のコーチングが絶対に正しいとは言い切れないので、そういう面でも難しいなと感じますね。

――客観的に保証されているものがないということですね。


XQQ:

選手の場合、例えば「ZETA」のVALORANT ACADEMY部門にいました、と言うと結構な保証になりますよね。難しそうではありますが、そういうものを何らかの形でコーチにも提供できたら、もっと日本人コーチがチームを探しやすくなるのかなとは思います。


人生で一度は世界大会で優勝してトロフィーを掲げたい


――現在はコーチを休業されていますが、この期間中の活動についても教えてください。


XQQ:

今回の休業には目的があって、いろいろなことを吸収したかったんですよね。今までは人と会ったり本を読んだりして、いろいろ吸収しながらやってきていたのですが、『VALORANT』に来てからは、ずっと忙しい状況が続いていたので。

なので、今は例えばFPSとは違うジャンルの、格闘ゲームの『ストリートファイター6』をプレイしています。これは単にゲームの楽しさもありますが、やはり格闘ゲームのコミュニティには30~40代の、現役で長く活躍している人がたくさんいるじゃないですか。そういう人たちのゲームや仕事に対する向き合い方は、自分とは違う考えもあってすごくおもしろいので、そこからいろいろ吸収したいと思っています。

あとは、英語の勉強ですね。『VALORANT』のリーグチームは、日本語で探すと「ZETA」と「DetonatioN FocusMe」(以下、DFM)の2チームしかありません。となると、「ZETA」を辞めたら「DFM」に行くのか、という話になってしまいます。でも、英語が話せたら、PacificだけでなくAmericas、EMEA、Chinaまで可能性が広がる。向こうが欲しいかは別として、行ける最低限の条件がそろいます。

英語は読めても、聞いたり話したりするのがなかなか難しいので、この期間中にしっかり勉強しています。休業期間に入って半年くらいが経ちますが、今はかなり英語に対しての障壁がなくなってきて、話すのも前よりずいぶん楽になりました。

――今後チャレンジしたいことや、コーチ復帰後に達成したい目標はありますか?


XQQ:

僕は選手のころから、海外のチームでプレイしてみたいという願望があって、それをコーチでやってみたいと思っています。あとは、やっぱり人生で一度は世界大会で優勝したいですね。

世界中でものすごい人数がプレイしているゲームで、世界大会に出られるチームは16チーム。人数にしたら、選手とコーチ合わせてたった100人前後ですよね。そこからさらに優勝できるのは1チームで、選手なら5~6人、コーチなら2~3人。世界に膨大なプレイヤーがいて、その一番上に立つってそれだけ難しいことだよなと、ふと思ったことがあって。

世界3位という結果も、今思えばすごいことですが、やっぱり一度くらいは頂点に立ちたい。自分たち以外がトロフィーを掲げている姿って、見ていると本当に悔しいものなんですよ。いつかそこに立ちたいという思いは、変わらずありますね。

――最後に、他にも何か記事を通じて伝えたいことがあればお願いします。


XQQ:

僕は「ZETA」VALORANT部門からは離れてしまいましたが、彼らのことはずっと応援しているので、「ZETA」VALORANT部門をよろしくお願いします。

――XQQさん、ありがとうございました!

――XQQさん、ありがとうございました!

取材・文:綾本ゆかり