【独占取材】横須賀市をeスポーツの聖地に!「Yokosuka e-Sports Project」を成功に導いた職員たち

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【独占取材】横須賀市をeスポーツの聖地に!「Yokosuka e-Sports Project」を成功に導いた職員たち

普段は表に出てこない「eスポーツを盛り上げる裏方さん」にインタビューする本連載。

今回は「Yokosuka e-Sports Project」(※1)を推進する、横須賀市観光課の担当者2名(関山さん、笹島さん)を取材しました。

同自治体は、2024年に初のオフライン実施となる「第5回 YOKOSUKA e-Sports CUP」(※2)を開催、81チームの参加と30社以上の協賛という大成功を収めました。一体、どんな人たちが運営しているのか、彼らの正体に迫ります。

※1 2019年に発足。eスポーツの普及・振興、地域での新しい価値の創造を目指す。2023年には「Yokosuka e-Sports Partner 制度」を導入し、市内外の関係企業・団体やプロチームとの連携を強化している。


※2 全国の高校生を対象としたeスポーツ大会。競技タイトルは『VALORANT(ヴァロラント)』。決勝トーナメントに進出した4チームを横須賀市に招待。「いちご よこすかポートマーケット」で決勝大会を開催した。

横須賀eスポーツの活動状況や取り組み


──eスポーツの活動を進めている理由や背景について教えてください。


若い世代を中心にeスポーツを文化として根付かせ、地域活性化につなげたいという思いがあるからです。

若い世代にはeスポーツを通じて自分の可能性を広げてほしいですし、年齢や障がいを問わないeスポーツを活用した、新たなコミュニティ形成もできたらいいなと思っています。

横須賀市は2011年から、ゲームやアニメとコラボしたスタンプラリーやトークイベント、展示会など、サブカルチャーを活用した観光集客の取り組み(※3)をしてきました。現在のeスポーツイベントで協賛いただいている、PCメーカー様やゲーム運営会社様との繋がりはその頃からのものです。

2019年、私たちの「eスポーツ事業を推進していきたい」という想いに、多くの企業様が賛同くださり、「Yokosuka e-Sports Project」が発足しました。

※3 2014年『INGRESS』のウォークイベントは通算3,000人を集客、2016年『ポケモンGO』の体験ツアー、2018年の公式イベントでは20万人来場者で経済効果は15億円。

──具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。


市内高校へのeスポーツ部支援や全国高校生向け、市内高校生向けのeスポーツ大会を開催しています。

単なるイベントの開催だけでなく、地域の特色を取り入れた企画を考えたり、地元の皆様に認知・支援してもらったりと、地域全体を巻き込む形を大事にしています。

もちろん、eスポーツだけに頼るのではなく、地域の他の産業や観光とも連携を図ることで、横須賀全体の魅力を高めていくことを目指しています。eスポーツはあくまできっかけの一つですが、横須賀をより良い街にするための大切なツールだと思っています。

横須賀市の状況とは


──「地域活性化につなげたい」とのことですが、横須賀市はどのような状況なのでしょうか。


横須賀市は、もともと軍港としての歴史があり、現在もその面影が残っています。しかし、近年は人口減少や高齢化が進んでおり、地域の活性化が急務となっています。
横須賀市を知ってもらうこと、いいイメージを持ってもらい横須賀に遊びに来てくれる
など観光面でも新しい取り組みを進めており、eスポーツの導入もその一環です。


──ご自身も横須賀市の出身とのことですが、この機会に横須賀市の魅力も教えていただきたく。


横須賀市の魅力は、何といっても自然と都市のバランスが絶妙な点です。

東京から近いにもかかわらず、海や緑が豊富で、住むのにも訪れるのにも適した環境が揃っています。そして「開国のまち」としての歴史を持ち、異文化が交差する街でもあります。アメリカ文化の影響を受けつつも、古き良き日本の要素が共存しているところは、他の地域にはないユニークさだと思います。


──地域創生×eスポーツにどのような可能性を感じていますか。


eスポーツは様々な課題解決のツールになりうると考えています。我々が取り組んできたように若い世代の可能性を広げること。世代間交流の促進や、高齢者の方向けの施策など、それぞれの自治体が抱える課題解決にeスポーツは活用しやすいと思いますし、その結果地域ごとの特性が出てきて地域創生に繋がってくる可能性はあるかなと感じています。

インフルエンサーに集客を頼りすぎない


──最近、各地の地方自治体がeスポーツ興行に力を入れています。中にはインフルエンサーなどで一時的に集客したものの、その後の活性化に繋がらなかったという事例もあります。横須賀市はその中でも、継続的に成功しているようにお見受けしますが、どのようなお考えで取り組まれていますか。


インフルエンサーを活用した集客は、確かに一時的な効果が出やすく、話題性を生みやすい手法です。しかし、その効果が持続するかというと、必ずしもそうとは限りません。

インフルエンサーの影響力に頼りすぎると、一過性のブームで終わってしまい、実際のファン層や地域に根ざしたコミュニティの形成が難しくなるというリスクもあります。

地道ではありますが、「eスポーツを文化として定着させたい」という想いを持って、大会開催や高校への支援を諦めずに継続的に実施したことで、横須賀市のeスポーツの取り組みが認知されたり、高校等のコミュニティも育ってきたと思っています。

──ただ単に集客するだけでなく「何が地域のためになるか」を考えて実施しているのですね。


そうですね。我々だけが頑張ったとしても持続性はないと思いますし、eスポーツがどのような形で地域のためになるか、根付いていくかを試行錯誤しながら取り組んでいます。

「オンライン」「オフライン」の違いを説明するところからの地道な営業で協賛企業を集めた


──ここまでの規模になるまでに、様々なことをされてきたかと思いますが、特にどのようなことに苦労されましたか。


横須賀で主催するeスポーツ大会では、私たちは地道にスポンサーを集めることから始めました。実際に地域の企業や商店を一件ずつ訪問して、私たちのビジョンや計画を直接説明し、協賛をお願いしました。

eスポーツとは何ぞや、相手にとってeスポーツがどのような魅力があるのか。対面でお話することで生まれてくるものもあるので、電話や書類で終わらせないことを重視しました。

──地道に営業をされたのですね。eスポーツという新しい概念の説明となると、理解を得るまでが大変だったのではないでしょうか。


苦労しました。最初はなかなか理解や賛同を得ることができませんでした。eスポーツに詳しくない企業様に説明する際は、「オンラインイベント」と「オフラインイベント」の違いから説明しなければならないこともあります。

しかし、何度も足を運び、協賛メリットなどについて丁寧に話し合うことで、徐々に地元企業からの理解と協力を得られるようになりました。

市役所特有のメリット・デメリットを理解した「持続可能なeスポーツ」への挑戦


──今後の課題について教えてください。


横須賀市のeスポーツプロジェクトを進めるにあたり、市役所の仕組みには独特の難しさがあることを痛感しました。市役所には公平性や堅実さが求められる一方、スピード感や柔軟性が求められるeスポーツのような分野では、その点が大きな壁になることも少なくありませんでした。

例えば、予算の調整や新しい取り組みへの理解を得るための手続き・時間が必要となるため、その間にプロジェクトの進行が遅れてしまうこともあります。


──確かに…お話を伺っていると、様々な制約がある中で、関山さんと笹島さんの熱量と行動力で何とか推進されているような印象を受けました。


そうかもしれません。短いスパンでの人事異動がありますし、他の部署にもeスポーツの可能性を理解してもらうことも必要だと思います。
また、市役所だからこそ実現できる安定的な支援や、地域全体を巻き込む力がある一方で、予算に限りもありますし、先ほどのスピード感を求めるためにも、市役所だけでは限界もあります。
その課題解決のため、2023年には「Yokosuka e-Sports Partners制度」をスタートさせ、産学民官連携で横須賀市を舞台にeスポーツを推進できないか模索しています。
地域や企業・学校と協力し、各方面からのサポートを得ていく道を模索することで、このプロジェクトの持続的な成長を目指しています。

横須賀市観光課さん、ありがとうございました!

付録:横須賀市内におけるその他のeスポーツ関連の取り組み
・eスポーツ部設立支援:横須賀市内高校に高性能PCを無料貸し出し
・eスポーツ部環境の整備支援:教育・ネットワーク敷設補助など
・プロeスポーツチームの誘致:遊休施設を活用した移住の取り組み
・国際交流イベントの実施:市内高校と米海軍基地内高校のeスポーツ交流
・ひきこもり者を対象としたeスポーツ大会の実施:市内高校生との交流
・高校自作PC組立教室開催:デジタル人材育成