なぜドリエルは「プロゲーマーの"不健康"なイメージ」に着目できたのか?

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なぜドリエルは「プロゲーマーの"不健康"なイメージ」に着目できたのか?

普段は表に出てこない「eスポーツを盛り上げる裏方さん」にインタビューする本連載。

今回は、2025年7月5日(土)に両国KFCホールで開催された異色のeスポーツイベント「SLEEP FIGHTERⅡ supported by ドリエル」を取材。勝敗に「睡眠量」が影響する独自ルールを通じて、eスポーツ×健康という新たなアプローチに挑んでいます。

このユニークなイベントをプロデュースしたのは、エスエス製薬から販売されている睡眠改善薬ブランド「ドリエル」。今回は、その企画・運営を担当したブランドマネージャーの亀井さんにお話を伺いました。

ドリエルがなぜeスポーツと睡眠を掛け合わせたのか、その狙いや社内の反応、そしてイベントに込めた想いについて詳しく伺いました。

第一回の総視聴数は「480万回」予想以上の反響が


──まずは、今回の「SLEEP FIGHTER」開催の背景について教えてください。なぜドリエルがeスポーツと関わることになったのでしょうか。


もともと、ドリエルのような睡眠改善薬やサプリメントは、世の中でなんとなく知られてはいます。ですが、「いつ、どんなときに使うものなのか」が十分に理解されていないという課題がありました。テレビCMなどで広く訴求するという手法もありますが、それだけでは届きにくい層や、もっと製品を深く理解してもらいたい層に対して、より丁寧なコミュニケーションができないかと考えていたんです。

そんな中で、配信やゲームといったカルチャーに触れる方々は、生活リズムが不規則になりやすく、睡眠の重要性が軽視されがちという課題があると感じていました。特にeスポーツの世界では、プロとして活躍するためには、日々のパフォーマンスが問われるにもかかわらず、睡眠が十分にとれていないケースも少なくありません。

そこで、eスポーツに関心のある方々に向けて、「睡眠が自分のパフォーマンスにどう影響するのか」を自ら体感してもらえるような場をつくれないかと考えました。より身近に、かつ自分ごととして睡眠の大切さを捉えてもらうことを目的に、「SLEEP FIGHTER」の企画がスタートしました。

──昨年に続き第2回の開催となりましたが、前回大会を終えた後、視聴者や参加者からの反響についてはどのような手応えがありましたか。



昨年開催した第1回では、予想以上に多くの方に見ていただいたという印象があります。公式のYouTube配信だけでなく、出演者の方々がそれぞれのチャンネルでミラー配信を行ったこともあって、総配信視聴数は479万回にも上りました。切り抜き動画も多く出回り、想定していた以上の広がりが生まれたと思います。

再生数といった数字面だけでなく、コメント欄やX(旧Twitter)などのSNSでも「睡眠ってやっぱり大事だよね」といった声が多く見られました。我々が届けたかったメッセージが、ちゃんと視聴者の皆さんに伝わったという実感があり、非常に嬉しく感じました。その手応えを受けて、より継続的な取り組みとして、今年も第2回を開催することになりました。

前回からのルール変更で、さらに「寝たひと」が有利に


──「SLEEP FIGHTER」では、睡眠時間が勝敗に影響するユニークな仕組みが特徴ですが、今回の「SLEEP FIGHTERⅡ」では「夢オチルール」など新たなルールも導入されました。これらのルール設計には、どのような狙いがあったのでしょうか。


昨年の第1回では、睡眠不足のプレイヤーが不利になるような構造を通じて、「寝ていないとパフォーマンスが落ちる」ということを伝えようとしていました。でも実際には、全チームで目標とする睡眠時間を達成しており、睡眠によるポイント差が生まれにくい場面もありました。

そこで今回は、逆に「よく寝た人が有利になる」構造に切り替えることで、よりわかりやすく、ポジティブに睡眠の重要性を伝えることを意識しました。

そのひとつが「夢オチルール」です。これは、睡眠の質を可視化した“睡眠スコア”の平均値の高いチームが試合で一度だけ負けたゲームをなかったこと、つまり「夢オチ」にして再戦できるというルールです。こうすることで、「良い睡眠をとっていたら巻き返しのチャンスがある」という前向きなメッセージを伝えられるという狙いです。

また、試合の勝敗が「対戦ポイント」と「睡眠ポイント」の合計で決まるという基本ルールも、「パフォーマンス」と「コンディション」の両方が重要なんだということを伝えるために設計しました。

eスポーツの世界では、どうしても勝敗ばかりに注目が集まりがちです。だからこそ、「どれだけしっかり寝てきたか」という要素も加えることで、「睡眠もまた、勝負の一部なんだ」と感じてもらえるようにしたかったんです。

SHAKAさんの「失言」を逆手に取ったプロモーション


──ドリエルはTV CMに香取慎吾さんや本田翼さんなど、ヘルシーなイメージのある方を起用されている印象です。しかし、今回の出演者の方々は、ストリーマーや実況者を中心にかなり個性的なメンバーが揃っていました。良くも悪くも「クセがある人」が多い印象でしたが、演者の人選についてリスクは感じませんでしたか。


もちろん、広告として「万人受けする」「とにかく好感度が高い」方にお願いするという選択肢もあったかもしれません。しかし、今回はeスポーツが好きな方に私たちのメッセージをしっかり届けることが目的だったので、このような人選になりました。

出演者のバランスについても、単に人気のある人を集めるというよりは、チーム全体の個性や相性、キャスティングとしての面白さも考えてお願いしました。

──昨年の大会終了後にSHAKAさんが発した「たくさん寝てほしい、俺の代わりに」というコメントをもとに、今年はプロレス的な演出を加えたプロモーション動画が公開されました。再生回数も大きく伸び、大きな反響を呼びましたが、こうしたプロモーションにはどのような狙いがあったのでしょうか。







昨年の大会後、SHAKAさんのインタビューには私が立ち会っていたわけではなかったので、放送を見て初めて内容を知り、「えっ、何これ!?」と本当に驚きました。睡眠の大切さを伝えるイベントなのに、「俺の代わりに寝てほしい」って言ってるじゃん(笑)、と。

視聴者の皆さんがそれを面白がって、ポジティブに受け取ってくれるのであれば、それはそれでアリだなと思い、今回の動画に繋がりました。

芸能人ではなく、ゲーム配信者だからこそリーチする層


──エスエス製薬のような伝統ある企業がeスポーツイベントを企画・開催するのは、とてもユニークな取り組みに感じます。社内ではこの企画に対してどのような反応がありましたか。また、ブランドとしてどのような意味を込めて取り組まれているのでしょうか。


確かに、医薬品ブランドとしては珍しい取り組みかもしれません。社内の他の部門で同様の企画はほとんど例がなく、新しい挑戦として見られていたと思いますが、特に強い反対があったわけではありません。

ドリエルは、エスエス製薬の中でも比較的規模の小さいブランドです。だからこそ、限られた予算の中で、どうすれば効率的にメッセージを伝えられるかという視点を非常に重視しています。

そのような戦略において、「SLEEP FIGHTER」は、テレビCMなどのマス広告とは異なり、狭く深く、特定のコミュニティにしっかり刺さるような施策として、eスポーツという切り口を選んだという背景があります。

現在テレビCMでは香取慎吾さんに出演いただいていて、そちらはより一般向けのメッセージ発信として行っています。一方で「SLEEP FIGHTER」は、eスポーツに興味のある層に向けて、もっと踏み込んだ文脈で「睡眠の大切さ」を届けたいという狙いがありました。

昨年の第1回を通じて、視聴者の反応やコメントからもポジティブな手応えが得られたので、今年も年間の施策の一環として継続することになりました。

──今回の「SLEEP FIGHTERⅡ」を経て、今後ドリエルとしてはこの取り組みをどのように発展させていく予定でしょうか。 今後の展開について教えてください。


実は現在、プロゲーミングチーム「Good 8 Squad」との連携企画も準備しています。まだ具体的な施策は検討中ですが、より継続的に関われる枠組みを模索しているところです。

「SLEEP FIGHTER」のようなイベントは、どうしても年に1回といった単発の取り組みになりがちですが、こうしたチームとの連携が実現すれば、もっと日常的な接点の中で睡眠の大切さを伝えていくことができるのではないかと期待しています。

──亀井さん、ありがとうございました!


取材・文:小川翔太、松永華佳