eスポーツチームのスタッフってどんな仕事?

  1. eekトップ
  2. ブログ一覧
  3. eスポーツチームのスタッフってどんな仕事?

eスポーツチームのスタッフってどんな仕事?

普段は表に出てこない「eスポーツを盛り上げる裏方さん」にインタビューする本連載。

今回の取材の舞台は、8月23日(土)・24日(日)、京王アリーナTOKYOで開催された「VALORANT Challengers Japan 2025 Season Finals」。会場では「Split 3 Main Stage」に出場する全8チームがチームブースを出展。オリジナルグッズの販売や選手とのミート&グリート、写真撮影が行われました。
我々もチームブースにお邪魔して、裏方のスタッフの方々に、チームの特徴や強み、普段の業務内容や仕事のやりがい、スタッフとして活躍できる人物像について伺いました。

今回、取材させていただいたのは「REJECT」「FENNEL」「QT DIG∞」「DetonatioN FocusMe」「RIDDLE ORDER」の皆さんです。


REJECT

──チームの特徴や強みを教えてください。


南さん REJECTは代表の甲山翔也が元eスポーツ選手という経緯から誕生しました。当時、所属チームの代表が突然消息不明になり、給料が支払われない状況に陥った経験をきっかけに、代表が自ら選手の給料を工面し、チームを立ち上げたのが始まりです。

現在は部門数が非常に多く、それぞれの部門で実力のある選手が所属しています。さらに、ソニー、Yogibo、Visaなどといった大手スポンサーからの支援を受けており、ブランド力や選手へのサポート体制の厚さも大きな強みです。

──普段の仕事で最もやりがいを感じる瞬間と、逆に大変だと感じることは何ですか。


南さん 私はバックオフィスを担当しており、労務と総務を兼務しています。仕事でやりがいを感じるのは、REJECTがスタートアップであり、まだ社内ルールが十分に整っていない中で、従業員が負担なく業務に集中できる環境を整えていく過程に関われる点です。また、競技部門の大会を社内全体で一体となって応援する文化も大きな魅力だと感じています。

一方で大変なのは、現在進めている上場準備に関する業務です。新しいルールや仕組みを整備し、社員に周知して実行してもらう必要があります。ただ伝えるだけでなく、理解してもらうことが難しく、全社に浸透させていく過程で苦労することも多いです。


──チーム運営の仕事を進める上で、どんな方が活躍できますか。


南さん 担当する職種によって求められる資質は異なります。

バックオフィスであれば、eスポーツの知識よりも専門的な業務に関する知識が必要ですが、マネージャーやクリエイティブ、営業などは、各部門やコミュニティを理解し、チームの動向を把握できることが前提となります。

そのうえで共通して必要なのは「熱意」です。eスポーツ業界はまだ確立されたビジネスモデルや運営方法がなく、模索しながら進んでいる段階です。大変なことも多いですが、自ら主体的に学び、率先して取り組む姿勢がある人こそ、この仕事に向いていると思います。

REJECTでは現在、採用を強化しております。我こそはという方のご応募を心よりお待ちしております。

REJECT求人一覧

FENNEL

──チームの特徴や強みを教えてください。


藤原さん 選手とスタッフの仲が良くて、一丸となって全力で戦っている家族のようなチームです。実際、会場ではスタッフも声を出して盛り上げるのですが、あまりに熱が入りすぎて「FENNELさん、声が大きい」と注意されることもあるほどです(笑)。

酒井さん VALORANT部門の練習拠点では、マネージャーやスタッフが顔を出して声をかけ合っています。良い意味で友達のような距離感で、選手も安心して活動できる環境だと思います。

──普段の仕事で最もやりがいを感じる瞬間と、逆に大変だと感じることは何ですか。


藤原さん 私はアパレル部門を担当しています。その中でやりがいを感じるのは、オフライン会場で多くのファンの方がグッズを購入し、それを身に着けて応援してくれる瞬間を見た時です。とても嬉しいですね。

大変なのは、FENNELの強みでもある圧倒的な商品数と在庫数が、管理の煩雑さという課題につながっていることです。今回の会場にも、普段オフィスで使っている棚を解体して持ち込み、会場で再組み立てするなどの準備が本当に大変でした。

酒井さん 私は第五人格部門のマネージャーを務めています。選手たちが新作アパレルを着てモデルのように決めている姿や、ファンの大きな声援を受けて輝いている姿を見ると、「頑張ってよかった」と心から思えます。

一方で、マネージャーとして選手を管理することが一番大変です。選手のパフォーマンスを最大限に引き出すため、時間や練習中の雰囲気など気を配ることが多く、時には負担を感じる場面もあります。

苦労する面も多いですが、一方で達成感も大きく、選手の成長を感じられる瞬間が大きなやりがいになっています。

──チーム運営の仕事を進める上で、どんな方が活躍できますか。


藤原さん  アパレル部門では、アパレル業界経験者の方が即戦力になります。ただ、eスポーツのアパレルは部門ごとにファン層が異なり、売れるアイテムもまったく異なります。そうした調整に柔軟に対応できる力も必要です。

酒井さん マネージャーには「話しやすさ」や「相談しやすさ」が何より大事だと思います。さらに、一人ひとりの選手に合った距離感や接し方を見極め、臨機応変に対応しながら信頼関係を築ける人が活躍できるはずです。


QT DIG∞

──チームの特徴や強みを教えてください。


中川さん QT DIG∞は、eスポーツの無限の可能性を追求し、プロeスポーツチームの運営や、イベントの企画、選手育成・教育など、eスポーツに関わる事業を展開しています。多くのチームは東京や関東を拠点としていますが、私たちは九州に根ざしたチームです。地域貢献をしながら地元を盛り上げ、そこから世界に挑戦していくというのが、QT DIG∞のコンセプトです。

そのため、協賛企業やファンの方から「福岡のチームだから応援します」と言っていただけることも多いです。リアルスポーツに近い地域密着型の活動スタイルが強みだと思います。

──普段の仕事で最もやりがいを感じる瞬間と、逆に大変だと感じることは何ですか。


中川さん  私は、アスリート部の副長という立場です。やりがいを感じるのは、やはり選手が結果を残した時です。私たちスタッフも一緒に喜びを分かち合えるのが、何よりの喜びですね。選手とスタッフの距離が近く、「やりました!勝ちました!」とすぐに報告してくれるので、その瞬間が本当に嬉しいです。

大変なのは、家族や友達のように距離が近いからこそ、お互いに遠慮がないところです。選手から「(この作業)面倒なので、お願いしてもいいですか?」と、軽いノリで頼まれることもあります。

ただ、遊ぶときは一緒にゲームやご飯に行くなど楽しむ一方、締めるところはきちんと締める。りこのメリハリのある関係性が、うちのチームらしさだと思います。

──チーム運営の仕事を進める上で、どんな方が活躍できますか。


中川さん 自分よりも他人を大切にできる人です。「自分が頑張りたい」というより、「誰かのために何かしたい」と思える人や、ゲームやeスポーツが好きで、「選手のために何かできないか」と考えられる方が向いていると思います。

もちろん自分から新しいことを生み出す力も大切です。しかしそれ以上に、「どうすれば選手の環境がもっと良くなるか」などを常に考え続けられるホスピタリティのある人が、この仕事に合うと感じています。


DetonatioN FocusMe

──チームの特徴や強みを教えてください。


塚本さん DetonatioN FocusMeは歴史の長いチームで、格闘ゲームやVALORANTなど幅広い部門を展開しています。特にVALORANT部門は、日本で2チームしかない「VALORANT Champions Tour Pacific (VCT Pacific)」に参戦しており、国際舞台で戦っているのが大きな特徴です。

強みとしては「勝つことがファンへの最大の恩返し」という考えを大切にしている点です。勝利こそがファンの方々への一番の恩返しになると考え、我々スタッフも「競技で勝つこと」を最優先に、選手を支えることに力を入れています。

──普段の仕事で最もやりがいを感じる瞬間と、逆に大変だと感じることは何ですか。


塚本さん 私はVALORANT部門のマネージャーを担当しており、主に韓国で行われるリーグに参加する際に帯同し、通訳や生活面のサポートをしています。選手とほぼ24時間365日一緒にいるような形で支えているので、勝てば一緒に喜び、負ければ一緒に悔しさを味わう。最前線でそうした瞬間を共有できるのが大きなやりがいです。

一方で、大変なのはスケジュールや海外遠征に伴う準備です。昨年は中国大会にも帯同しましたが、現地でのタクシーの利用方法や出前アプリの使い方など、細かな部分まで事前にリサーチしなければなりません。選手に余計な負担をかけないよう徹底して準備する必要があり、そこが難しさでもあります。選手が試合や練習に集中できる環境を整えることを常に意識しています。

──チーム運営の仕事を進める上で、どんな方が活躍できますか。


塚本さん 必須スキルとしてまず挙げたいのは語学力です。eスポーツは日本だけでなく、韓国やヨーロッパなど世界各国で展開されています。特に韓国はeスポーツ発祥地でもあるため、言語の壁を越えられるスキルは大きな強みになります。

また、コミュニケーション能力も欠かせません。eスポーツ選手の中には、もともとコミュニケーションが得意ではない方もいます。そうした選手と関わり、信頼関係を築くためには、相手に合わせて円滑にやり取りできる力が必要だと思います。


RIDDLE ORDER

──チームの特徴や強みを教えてください。


清野さん RIDDLE ORDERは「エンタメチーム」と自称していますが、実際は選手もストリーマーもスタッフも真摯に自身の役割を果たしています。外から見ると面白さや笑いの要素が目立ちますが、その裏でプロとしてやるべきことを徹底して取り組んでいる、エンタメと真剣さの両立こそが強みだと思います。

スタッフや選手・ストリーマーの間には相互のリスペクトがあり、お互いを尊敬し合える関係性が築けているのもRIDDLEらしさです。

──普段の仕事で最もやりがいを感じる瞬間と、逆に大変だと感じることは何ですか。


清野さん 私は転職して1か月ほどですが、現在はYouTubeの企画立案や案件の準備、環境整備など裏方として幅広く業務を担当しています。その中でやりがいを感じるのは「ファンの方にどう楽しんでもらうか」と同時に「どうブランディングするか」という両方の視点を持って取り組めることです。そうして形になった企画や動画が公開され、ファンの方から良い反応をいただけると、とても嬉しく感じます。

大変なのは、業界未経験で知識がまだ十分ではないため、先輩から学びながら日々インプットしている点です。時間を見つけてeスポーツ競技シーンや配信者の動画を見るなど、周囲から吸収できるものがあればを積極的に自身に取り入れています。前職の営業経験から培った「プロジェクト管理」や「報連相の速さ」などの社会人としての基礎は活きていますが、今はeスポーツ業界ならではの知識を追いつくことに力を入れています。

──チーム運営の仕事を進める上で、どんな方が活躍できますか。


清野さん RIDDLEで働くなら、まずはRIDDLEのカルチャーを好きで、自分に合うと感じられることが何よりも大切です。そのうえで、選手やストリーマーの意向を第一に考え、自分のやりたいことよりも「どうすればチームの力になれるか」を考えられる人が向いています。

また、エンタメと真剣さを両立できることも重要です。何事も全力で楽しみながら、芯を持ってチームのために真摯に取り組める人であれば、RIDDLEの裏方として活躍できると思います。

取材・文:小川翔太、松永華佳