まずeスポーツを知ってもらうことから──市町村「33か所」と向き合う、神奈川県福祉子どもみらい局 福祉部 高齢福祉課【インタビュー】

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まずeスポーツを知ってもらうことから──市町村「33か所」と向き合う、神奈川県福祉子どもみらい局 福祉部 高齢福祉課【インタビュー】

普段は表に出てこない「eスポーツを盛り上げる裏方さん」にインタビューする本連載。

今回は、「eスポーツを通じた多世代交流」をテーマにしたeスポーツイベント「SUNSHINEeスポーツフェスタ2025」を実施した「神奈川県 福祉子どもみらい局 福祉部 高齢福祉課」の加藤様、岡本様に話をうかがいました。

神奈川県内には33の市町村があり、それぞれ人口規模や都市化の度合いが地域によって大きく異なります。大都市部では交通・商業・医療が集積し、沿岸部や山間部、観光地を含む地域では、自然や地域コミュニティを活かしたまちづくりが進められています。

33か所の「魅力」や「課題」が異なる市町村、それらの「福祉」を総合的に管轄する、高齢福祉課の方々に、具体的な取り組みや「eスポーツ」を高齢福祉イベントに活用するヒントを聞きました。

「高齢福祉課」の具体的な取り組みとは


──本日はよろしくお願いいたします。まず、「神奈川県 福祉子どもみらい局 福祉部 高齢福祉課」は、どのようなことをされている部署なのかお聞かせください。


神奈川県 福祉子どもみらい局 福祉部 高齢福祉課では、高齢者保健福祉計画を担当しています。そのなかでeスポーツによる社会参加、多世代交流をメインテーマにSUNSHINE eスポーツフェスタを開催しました。

高齢福祉課では、もともと認知症に関する普及啓発や介護予防の取り組みを行っています。

大きなところで言うと、「コグニサイズ」(※1)という頭と体を同時に使う体操を県全体に普及させました。コグニサイズとは、国立長寿医療研究センターが開発した「認知(Cognition)」と「運動(Exercise)」を組み合わせた造語です。

例えば、3の倍数を読み上げながら体を動かすなど、脳トレとエクササイズを一緒にやるイメージを持っていただくとわかりやすいでしょう。

※1 運動と同時に頭を使うことで、脳機能の活性化を図る取り組み。例えば「足踏みをしながら数を数える」「しりとりをしながら体を動かす」など、身体運動と計算・記憶・判断といった認知課題を同時に行う。主に高齢者の認知症のリスクの軽減や介護予防を目的に開発され、注意力や判断力の維持・向上に効果があるとされている。近年では、健康づくりやリハビリ、地域活動にも広く活用される



最初は、私たちのような自治体が声を掛けていましたが、今は地域の方々がお互いに声を掛け合って、自発的に活動が行われています。

地域包括支援センター(※2)などが主体になって、公民館を借りて、地域の方々がイベントを主催しており、神奈川県全域に定着しているように思います。

※2 高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう支援する総合相談窓口。市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどの専門職が連携して、介護予防、介護サービスの相談、権利擁護、見守り支援などを行う。高齢者本人だけでなく、家族や地域住民からの相談にも対応している

高齢福祉課 加藤様、岡本様


eスポーツに関する取り組みは2024年から


──eスポーツに関する取り組みを始めたのはいつからでしょうか。


2024年からです。まさに昨年の「SUNSHINEeスポーツフェスタin Kanagawa」がeスポーツ関係の取り組みのスタートです。

神奈川県全体のeスポーツ施策は「文化スポーツ観光局」で取りまとめをしているので、連携しながら、高齢福祉分野でのeスポーツ施策を実施しています。

高齢福祉課では、eスポーツをコミニュケーションツールととらえ、eスポーツによるシルバー世代の社会参加の促進に大きな期待を寄せています。

より多くのシニアの方々へeスポーツを知ってもらうための取り組みについては、これからも力を入れていく必要があると考えています。ただ、神奈川県内の地域によっては、高齢者の「通いの場」で e スポーツをやっているところも増えてきましたので、少しずつ広まっている印象があります。

──昨年の「SUNSHINE eスポーツフェスタin KANAGAWA」に続いて、今年「SUNSHINE eスポーツフェスタ2025」を継続開催されるにあたり、どういった工夫をされましたか。


昨年のイベントは、シルバーeスポーツにテーマを集中させて行い、結果、来場者が300名でした。

今年のSUNSHINE eスポーツフェスタは、神奈川県、Fusion LLC、神奈川大学、東京アニメ声優&eスポーツ専門学校、株式会社コウプラス、電音エンジニアリング株式会社による共催のイベントです。

高齢者の社会参加だけではなく、多世代交流をメインテーマにして、シルバーeスポーツの大会以外にも、格闘ゲームの大会や、カードゲームの体験会、子供向けのポケモンカードの縁日や、神奈川県をテーマにしたゲームの体験コーナーを設けるなどし、イベント全体で1,600名以上の方に来場していただきました。

──1,600名以上とは!すごい盛り上がりですね。高齢者の方々のご様子や多世代交流の手応えはいかがでしたか。


高齢者の方にはシルバーeスポーツの大会以外にもポケモンの縁日や、本県の認知機能評価体験コーナーを楽しんでいただきました。

イベントの運営を東京アニメ声優&eスポーツ専門学校の学生さんや会場である神奈川大学の学生さんに協力していただいたこともあり、高齢者の方と学生さん達との多世代交流も行われたと思います。

メインのシルバーeスポーツの大会に関しても、地道な広報活動で参加者が去年の倍になりました。

神奈川県内の33か所のキャラバンでeスポーツをPR


──eスポーツ関連の取り組みとしては、「SUNSHINE eスポーツフェスタ」以外にどのようなことをされていますか。


「認知症改善キャラバン」という取り組みがありまして、そのなかで、eスポーツを周知させる活動もしています。

例えば、市町村からの希望に応じてeスポーツブースを設営して、eスポーツを体験できる場所の展開をしたり、eスポーツをPRする活動をしています。このキャラバンは神奈川県内の全33か所の市町村を回っています。

これまで、約10か所の市町村からeスポーツ関連の要望を受けてきました。

──実際に県内の市町村に出向いてイベントをされているのですね。かなり地道な活動に思えますが、どの程度の頻度で実施されているのでしょうか。


年間で60か所ほど実施しています。

もともと認知症未病改善のイベントは、毎年9月に横浜近辺で実施していたのですが、地域に波及させることに限界を感じて、キャラバンの活動を始めました。

認知症未病改善のイベントは、県庁で実施したとしてもなかなか来てもらえるものではないので、こちらから各地域に出向いています。

福祉分野で「eスポーツをどう取り入れるか」は手探り


──他部署でのeスポーツの取り組みやeスポーツに関する知見で、高齢福祉分野で参考になったものはありましたか。


高齢福祉の分野は通常の考え方と違っていて、採用すべきeスポーツタイトルも異なるので、知見を取り入れつつも、私たち独自の考え方で取り組んでいます。

しかし、まだ始めたばかりなので、手探りな部分も多いです。

──神奈川県 福祉子どもみらい局 福祉部 高齢福祉課の皆様、本日はありがとうございました。お話を伺っていて、市町村33か所でのキャラバンなど、日々の地道なご活動が実を結んでいるのを感じました。地域の方々の要望に応えながら、eスポーツ自体の周知にも尽力されているお話がとても印象的でした。改めまして、今回は貴重なお話をありがとうございました。

取材・文:小川翔太、松永華佳