岸大河さん&OooDaさん「VALORANT Challengers Japan 2024」【インタビュー】

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岸大河さん&OooDaさん「VALORANT Challengers Japan 2024」【インタビュー】

eスポーツ専門の求人メディア「eek(イーク)」では、eスポーツに関するさまざまな仕事にフォーカスした記事をお届けします。第3回は、eスポーツキャスターとして活躍する岸大河さん&OooDaさんのインタビューです。

前半では初の名古屋開催となった「VALORANT Challengers Japan 2024」(CHJP 2024)についてインタビュー。後半では「eスポーツキャスターを目指したキッカケ」「eスポーツキャスターという仕事」「プロゲーマーのセカンドキャリア」について聞きました。

初の名古屋開催となったVCJについて


──今回のイベントに関して、ここまでの感想や注目ポイントをお聞かせください。

岸:

今回の名古屋での開催は、なかなか「挑戦的」だったのかなと感じています。

(『VALORANT』の大会は)これまでは関東圏での開催が多く、昨年は大阪で2度開催されましたが、名古屋でここまでの規模での開催というのは初です。

特に今年は、「ZETA DIVISION」「DetonatioN FocusMe」がインターナショナルリーグに参加していて、元「Crazy Raccoon」のメンバーが「DetonatioN FocusMe」に入ることになったので、人気選手が国内大会「VALORANT Challengers Japan 2024」に不在の状態で、お客さんを集めれるかというのが課題になっていました。

そんな中での名古屋開催は、挑戦的だったものの結果的にはうまくいったと感じています。名古屋開催ということで初めて来られた方々も多く、様々なお客様に楽しんでいただけていて大変嬉しく思っています。

応援ボードのコメントで「名古屋で実施してくれて嬉しい」という内容も見かけましたし、会場のファンの方々とお話しした時に「今まで見に来れなくて、今回初めて来れました!」という声も伺いました。

ファンの方々からしたら、待ちに待った名古屋での開催だったのかもしれませんね。これを皮切りに、福岡や東北など、他の地方での開催というのも見えてきたといえるでしょう。

名古屋は国内でも、特に「eスポーツに力を入れてる」地域なので、とても意義深い開催になったと考えています。

いま注目の日本人選手とは


──試合の見どころや注目選手についてお聞かせください。

OooDa:

国内で実力&人気共にトップティアにいる「FENNEL」と、これまでずっと勝ち上がってこれなかった 「REJECT」が、グランドファイナルで戦っているので 「REJECT」がジャイアントキリングを起こすことができるのかという点を注目しています。

「FENNEL」「REJECT」両者とも、とても日本でも珍しく、攻めっ気に溢れているチームなので、意外なキャラクターでの編成もあることも相まって、見ていて面白いですね。

試合展開についても、チームの戦略の成功と失敗が、明らかに分かるので、そこも含めて魅力的なチームに仕上がっていると感じます。そういったところに注目してもらえるといいんじゃないかなと思います。

特に「REJECT」のAkame選手やmuto選手は、これまで優勝のチャンスを逃した経験のあるメンバーですので、そういったメンバーがどう勝ち上がっていくか注目しています。

──岸さんは普段はインターナショナルリーグのキャスターをされているかと存じ上げますが、今回の国内イベントについてはいかがでしょうか。

岸:

おっしゃるとおり、僕はキャスターとしてはインターナショナルの方に在籍していて、今回のような「VALORANT Challengers Japan」などの国内大会は、MCの補助という形で入っているので、その立場からコメントさせていただきます。

今大会に出場している選手たちの中にも、いずれはチームのスカウトを受けるか「VCT ASCENSION PACIFIC」で勝って、インターナショナルリーグで活躍する選手が出てくるでしょう。

それをぜひ国内から見守って、応援して「いつかインターナショナルでこの選手の活躍が見てみたい!この選手の人生を追ってみたい!」と思う方が増えていただけたらいいですね。

僕は選手のパーソナルな部分、例えば真面目な一面、エモさ、普段はおちゃらけているけど試合ではすごく集中しているなど、そういった面にも注目しています。

選手のキャリアアップは、もちろん自分自身で掴むものではありますが、応援してくださるファンの皆さんあってのものだと思っています。だからこそ、選手のプレー以外の側面も見ながら応援して、支えていただけたら嬉しいです。

なので全ての選手に注目をしていますが、特にインターナショナルリーグで活躍してほしいと思っているのが、SyouTa選手、Jinboong選手、Akame選手ですね。他にも素晴らしい選手が多く出場しているので、彼らの環境が変化することでステップアップしていくことは間違いないでしょう。

eスポーツのキャリアを目指したきっかけ


──ここからはeスポーツキャスターという仕事についてお伺いしたく。OooDaさんは、どういった経緯でeスポーツのキャリアを志されたのでしょうか。

OooDa:

元々はヒップホップとか自分の好きなことを色々やりながら、映画監督になりたいと思って東京に出てきたんです。

ただ、3つくらい自作映画を作ったんですがそれもうまくいきませんでした。

オンラインゲームと出会って、オンラインゲームをやっていくうちに、友達ができて、彼女ができて、彼女に会うために現場作業員やPCの修理屋さんの営業などの仕事をするようになりました。

そんな折に、ゲームのコミュニティで「ちょっと実況してみない」と声をかけてくれた方がいて、遊びで実況を始めたのがきっかけです。今までいろんなことに挫折してきた僕が実況だけは続けられたんです。

仕事の方も順調で、社員登用のお話もいただきました。ただ、週末にはeスポーツのコミュニティのイベントがあったので「土日は働きたくない」を理由に就職の話はお断りして、アルバイトとして働き続けました。

当時、コミュニティの実況活動ではお金をいただいていたわけではないのですが、「そのゲームがもっと流行ってほしい」「ゲームの大会がもっと面白いものであってほしい」といった思いから、コミュニティから離れたくないという気持ちがあって、やめられなかったんです。

続けているうちに、ゲームのイベント制作会社から、「うちで働きながら実況してみない?」とお声がけいただいたのがきっかけでどんどん実況の仕事が広がっていきました。

eスポーツキャスターという仕事について


──岸さんは学生時代にサッカーに打ち込まれていて、その後、FPSの国際大会で結果を出されていたとのことですが、その後、プレイヤーではなくキャスターの道に進まれたのはなぜでしょうか。

岸:

最初は将来のことを考えて、選手とキャスターの両方をやっていたんですが、 両立ができなくなってしまったんです。キャスターの活動をしていく中で、チームの練習に参加できないことも増えてきて、この状態では選手として続けるのは難しいなと。

あと当時、自分がやっていたゲームタイトルが、世界的にはそこまで知名度が高くなかったというのもあります。自分の年齢も25歳でしたので、このタイミングでプレイするタイトルを変えるのも厳しいと考えました。

そこで、選手として生きるのではなく「選手が活躍できる場を作る側」になれないかと思い、キャスター1本で生きていく決心をしました。eスポーツを普及させる側になろうと考えたのです。

僕がキャスターをやり始めた頃は、yukishiroさんがまだ選手をやっていた時代でしたので、十分なeスポーツキャスターがいたわけではありませんでした。なので、FPSに限らず、多くのeスポーツのイベントでキャスターが不足している状況でした。そこで自分が斡旋され、素人ながらキャスターの仕事に取り組んだら、定期的に仕事が来るようになりました。

どうしてもお金を稼がなくてはいけない時期でしたので、キャスターをやればある程度お金が入り、親も安心してくれるし、自分が好きなeスポーツに関われるということで、結果的には好きな職業になりました。


──eスポーツキャスターという仕事で意識されていることは何でしょうか。

岸:

我々は仕事中は試合を客観的に見ている部分があります。客観的な視点を持つことで見えてくる、選手の隠れた活躍や技術があるんです。

チームで戦うeスポーツの場合、勝利に貢献している選手が誰なのか、表面的には見えにくい部分もあるんですよね。

例えば『VALORANT』の試合だと、どうしても「キルを取る選手」だけが活躍しているように見えてしまうのですが、実際はその選手以外にも勝利に貢献している選手はたくさんいます。

「チーム内の士気を上げている選手」「チームメンバーが敵陣に飛び込めるように指示を出す選手」など、僕はそういった選手のことを評価したいと思っていて、キャスターとしてもそういった選手の活躍を言語化していきたいと考えています。


プロゲーマーの「セカンドキャリア」について


──OooDaさんは、元プロゲーマーに対する「セカンドキャリア支援」をされていますが、こちらの想いについてお聞かせください。

OooDa:

僕はeスポーツ業界で10年以上活動してきて、多くのプロゲーマーが引退してしまうのを見てきました。

その中で、キャスターをしながら、元プロゲーマーと学校&企業を繋ぐという活動もするようになりました。

表立ってセカンドキャリア支援のプロジェクトを打ち出す前から、本気でゲームをプレイしてきたプレイヤーに、eスポーツの制作会社さんを紹介することはしていたんです。

観戦オブザーバーや新作ゲームタイトルのテストプレイなど、ゲームに関する仕事というのは「1回でも全力でゲームに熱意持って全力を注いだ人」の方が適していると考えています。

やがては少しずつゲーム会社さんとの繋がりも出来てきて、仕事を紹介できるケースが増えてきたので、3年程前に本格的に「セカンドキャリア支援」を始めました。

とあるリーグの終了をきっかけに多くのチームが解散し、多数のプロ選手が路頭に迷ってしまうということがあり、その際に「救える限り、救いたい」と思い、SNSでも積極的に呼びかけるようにしました。

ただ、ここで勘違いして欲しくないのが、僕が伝えたいのは「OooDaに連絡したら絶対に就職できる」「eスポーツの未来は明るいんだ」といったメッセージではないということです。

あくまでも、僕が提供できるのは(キャリアに関する)ステップアップの機会や出会いに過ぎないので、その機会をきっかけに自分の力で何かを見つけてほしいんです。最終的には自分で決めるという姿勢が大切です。

トップゲーマーはどの分野でも自分の力を発揮する


──岸さんは、プロゲーマーのセカンドキャリアについていかがでしょうか。

岸:

OooDaさんの言うとおり、いまeスポーツ業界に残っている元プロゲーマーの人たちも、自分自身で何かの能力を身につけて、さらにはその技を伸ばしてキャリアアップされている方が多いですね。

多くの時間と労力を注いでeスポーツ界隈で努力してきた方々は、ビジネス界隈では少し遅れた位置からのスタートになるかもしれませんが、最終的に結果を出せるかどうかは「熱量をどこに集中させるか」が重要になってくるので、トップゲーマーはどこにいてもうまく自分の力を発揮していると思います。

──お二人は付き合いが長いと思いますが、お互いのことやキャリアについて話す機会はありますか。

岸:

あまりないかもしれません。お互いが生い立ちよりも「いま何をやっているか」の方を大切にしているからなのかもしれません。僕たちに限らず、過去に家庭内や友達関係でトラブルがあったとか、引きこもりになってしまったとか、人に言えない経験をしてる人はたくさんいると思うんです。

そういった、様々なバックボーンを抱えた方がeスポーツ業界にはたくさんいるので、生い立ちというよりは「いま何を頑張って」「何に挑戦しているか」ということの方が重要だと思っています。


──岸大河さん&OooDaさんありがとうございました!

取材・文:小川翔太