【インタビュー】「ルネサンス大阪高等学校」eスポーツ担当者

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【インタビュー】「ルネサンス大阪高等学校」eスポーツ担当者

ついに現役のeスポーツ教職員がeekインタビューに登場!

今回は、高校生eスポーツ大会では強豪校の1つとして数えられる、ルネサンス高校グループ「ルネサンス大阪高等学校」梅田eスポーツキャンパスを取材。

同校のeスポーツ担当者様に「仕事のやりがい」「どんな人が向いているか」を訊きました。

ルネサンス大阪高等学校 eスポーツコースについて


──貴校がeスポーツ教育に取り組み始めたのはいつ頃からでしょうか?


2018年に(国内の高等学校としては)初めてeスポーツコースを取り入れました。

当時、eスポーツが黎明期だったというのもあり「eスポーツコースを立ち上げてみよう」という話になりました。


――2024年の「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」でも『リーグ・オブ・レジェンド』部門で優勝されたりと、貴校の生徒はどうしてeスポーツが強いのでしょうか?


生徒たちの努力がもたらした結果であることは言うまでもありませんが、ポイントの1つとしては、当コースに元プロであったり、ゲーム面で実力のある先生が在籍しているという点が挙げられます。

もちろん、当コースの知名度や口コミなどから、eスポーツに熱心な生徒が入学してくれている点も大きいでしょう。

また、オフラインでeスポーツの講義を実施しているという点が生徒のレベルアップに繋がっているのではないかと考えています。

当コースは週2日の通学を設けており、オフラインで指導しています。(通信制高校としては珍しく)対面でのコミュニケーションを重要視していることが、eスポーツ大会での結果に結びついていると考えます。

――生徒の表情を見て、具体的にどのようなアドバイスをされるのでしょうか?


有効なアドバイスは生徒によって異なるので、何度も試行錯誤をしつつ、その生徒に合った教え方を探ることになります。

「このやり方はダメだった」ので「次はこのやり方を試そう」みたいな感じで、生徒が理解するまで教えていくスタンスです。

――ゲームスキルだけでなく、人間的な部分も教えたりするのでしょうか?


そうですね。eスポーツの世界でプロになれるのは一握りなので、「eスポーツのスキルを伸ばす」というよりかは「人間力を高める」というところに重きを置いています。eスポーツというのはあくまで「ツール」にすぎないという考えです。

eスポーツ専門学校には、プロゲーマーの育成に力を入れている学校も多く、当コースも「将来、eスポーツを頑張りたい」と考えて入学してくれる生徒が多いので、プロになれるレベルの教育は提供しています。

基本的に入学時には「3年間、eスポーツを頑張ってみよう」となります。一方で、卒業後にeスポーツの世界に行けなかったとしても、「自分は3年間、しっかり努力したんだ」と思ってもらえることも重要だと考えています。

その頑張りや努力が他のことにも繋げられるように導いてあげるのです。

仕事内容について


――eスポーツに関わる先生というのは、どういうお仕事をされているのでしょうか?


当コースで教えているゲームタイトルは「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」「VALORANT(ヴァロラント)」、「Fortnite(フォートナイト)」、「Overwatch 2(オーバーウォッチ 2)」が中心です。

先生が生徒に寄り添って、それぞれのeスポーツについて、上手くなるためのスキルを教えていきます。

一方では、学んだことを通して、将来の選択肢を増やしてもらうことが重要だと考えているので、必ずしもeスポーツのことだけを教えればよいというわけではないですね。

また、小学校~中学校で不登校だった生徒たちについては、当コースに通うことで「自信をつけてもらうこと」も狙いの1つです。

入学を検討されている保護者の方も「(今まで不登校だったのに)週2日も通えるのかな?」と心配されるのですが、子どもたちの持つ「ゲームが好き」という気持ちが原動力になって、不登校が解消されていくことが多いです。

入学後に「クラスと馴染めるだろうか」といった懸念やコミュニケーション面の不安についても、ゲームが好きで通っている生徒がほとんどなので、少なくともその部分で意気投合できることになります。

ただ、やはりコミュニケーションの仕方が未熟だったりすると、相手に嫌な思いをさせることもあるので、そこは私たちが注意してあげたり「こういう表現の仕方があるよ」と指導しています。

他には、オープンキャンパスなどを開催するにあたって、PR活動などを行いますね。

仕事で最もやりがいを感じた瞬間


――「仕事へのやりがいを感じた」具体的なエピソードを教えて下さい。


とある大会で成績を残してくれた卒業生から「先生のおかげで今の自分がいます」と感謝されたときです。

その子は、通い始めた当初、通学頻度が不安定でした。ただ、やがて「学校が楽しい」と言ってくれるようになり、通学頻度にも改善がみられ、バイトもするようにもなりました。

生徒が「一人で生きていけるほどの力を身につけて」「人への感謝の念を覚えてくれたとき」、我々としても仕事にやりがいを感じます。

――eスポーツを通して社会に出る準備ができたということでしょうか。


そうですね。必ずしも自己肯定感の高い子ばかりではないので、そこを上げていくといいますか、「自分は人一倍頑張れるんだ」と思ってくれたら嬉しいですね。

――ちなみに先程、お話に出ました「とある大会で成績を残してくれた」というのはいつの大会でしょうか。


「第4回全国高校eスポーツ選手権(2021年)」での「EXカチコチザウルス」というチームですね。全国ベスト8になりました。

LoL部門の決勝大会進出をかけた予選トーナメントで1軍のチームと当たって、何度か勝利するという奮闘を見せました。

私もその生徒たちとは長い付き合いだったので、3年間の集大成となる戦いを見せてくれたことに感動しました。

どのような人が「eスポーツ学校の先生」に向いているか


――この記事を読んで、eスポーツの学校で働くことに興味を持つ方がいるかもしれません。この仕事に向いている人の特徴は何でしょうか?


この仕事には大きく分けて「eスポーツを教える先生」「全体を管理する先生」の2つのポジションがあります。

「eスポーツを教える先生」の場合は、ゲームが上手くて生徒とちゃんとコミュニケーションが取れることが求められます。生徒の中には、節度のない発言をする子もいるので、そういった子に対して大人な対応が取れる方が良いでしょう。

あとはSNSでの発言に気をつけたり、自分の発言を正しくコントロールできることが求められます。また、人に見られる仕事ですので、他の人から見て「この人は大丈夫」という印象を与えられる人である必要があります。ただ単にゲームが上手いというだけでは難しいですね。

「全体を管理する先生」の場合は、別け隔てなく「全体を見れる」というのが重要です。ゲームだけではなく、人としてのサポートができる方が向いているでしょう。


例えば、教室に生徒が30名いた場合、5名で1チームだとすると、6チームになります。となると、必ずしも全てのチームに1人ずつの「eスポーツを教える先生」を配属できるとは限りません。

そこで「全体を管理する先生」が「eスポーツを教える先生」だけではフォローしきれない部分をカバーすることになります。



――「学業を通して自信をつけてもらう」をめざす以上、生徒さんを卒業まで導いてあげるのが優先事項になりそうですが、そこにどうアプローチできるかが「全体を管理する先生」に求められる要素ということでしょうか?


そうですね。ゲームを教えることに特化した先生だけでは「生徒がどれだけゲームが上手くなるか」に比重が寄ってしまいます。

どの生徒も今でこそ熱心にeスポーツに取り組んでいますが、卒業後、例えば50歳になったとき、今と同じようにガチガチにゲームをしているかというと、必ずしもそうではないでしょう。

人生100年時代といわれる中、(トータルして)ゲーマーとしての人生はそんなに長くはないと考えます。

よって「ゲーム以外にも教えられることが多い」というのは、この業界でも必要とされている能力といえるでしょう。

──ありがとうございました!